勤しめ!仁岡先生 尾高純一 スクウェア・エニックス 全8巻
子ども嫌いな中学校教師の仁岡と、不良のつもりでいる真面目ちゃん、浅井、自称現代をときめくチーマー、今江、何よりも遊びが大好きな上原、仁岡の中学時代そのものの前田、学級委員であることに妙な執着を見せる川﨑らの生徒によるギャグ漫画も、ついに最終巻を迎えた。8年間の集大成がここに!
1年に1冊しか単行本の出ない作品なので、8巻の発売イコール8年間の連載ということになる。細々とではあるが、密かな人気を得てずっと続いてきた作品だけに、終了は寂しい。いわゆるサザエさん的な時間の進み方のもと、生徒達が永遠に中学2年生を続けているからか、何となく作品の世界は終わりのない雰囲気を醸し出していた。作中では、何と仁岡がまだ新任1年目であるという忘れかけていた事実がさりげなく述べられている。8年間も続いた、教師の新任1年目と、生徒の中学2年生!それだけに、ふと訪れた終幕には寂しさを禁じえない。
意図してか、意図せずか、最終巻に収録されている話は、まるで今までの総集編のようだった。学校の屋上、お祭り、雑木林ではしゃぐ生徒達と、それに振り回される仁岡の姿、仁岡を愛して止まない河原先生の暴走、球技大会… 1巻からずっと続く基本路線に、1巻の時点ではいなかった前田や川﨑が加わって繰り広げられる大騒動は、相変わらずの面白さだった。特に、体育でダンスが必修化されたのを機に、皆がヒップホップの練習を始め、固い動きで変なラップを歌い出す話は、爆笑必至だった。元から言葉選びの上手い作者が、ここぞと韻を踏む台詞を連発し、大いに楽しませてくれた。
そして、最終話では、生徒達が仁岡について語る。その一言一言がまさに仁岡の人柄を表していて、しんみりしてしまった。極めつけは、最後の河原先生の台詞であろう。生徒達に慕われて(たかられて)いる仁岡の姿を見て、河原先生は「理想の教師かはわからないけど教師の理想ね」と語る。仁岡先生の魅力は、まさにこの一言に尽きる。中学生時代の自分を仲間外れにした同級生への仕返しも込めて、ガキを殲滅するために教師になったと言い張り、決して生徒に媚びないのに、実際には生徒から慕われ、課題作りや補習の計画にも熱心だ。そして、時には生徒と同じ目線で本気になって勝負したりもする。世間が求める教師像からは程遠いかもしれないが、誰もが、こんな先生が現実に1人くらいはいてもいいと思える、魅力的な教師ではないだろうか。もう新作が読めないのは寂しいが、ここまで続いた連載に感謝だ。
▼過去の記事▼
『勤しめ!仁岡先生(1)』『勤しめ!仁岡先生(2)』『勤しめ!仁岡先生(3)』PR