いまさらノストラダムス 善内美景 メディアファクトリー 全2巻
20世紀末に地球が滅びるという盛大な予言を外したノストラダムスが、実はイケメンで現在なお生きていたら… という空想に基づいて描かれた物語の完結巻。1巻の終盤に登場した謎の人物の正体は、20世紀末に地球を滅ぼすとされていたアンゴルモアであった。何とかアンゴルモアは去り、破滅を免れたかのように思えた地球であったが、ノストラダムスは、隕石が地球に接近し、災難を巻き起こす未来を予見する。しかし、もはや彼の言うことに耳を貸す人などいない。人知れず近づく危機に対して、彼が選択する行動とは。
1巻は「ハートフル日常コメディ」の名に相応しい内容であったが、2巻はコメディ色を残しつつ、ノストラダムスが現在も存命であるという設定が活きてくる魅力的な展開であった。20世紀末にノストラダムスが奇妙に感じたのは、人々は地球の滅亡を恐れるのではなく、むしろ楽しむ世論のあり方であった。地球の破滅までは明言していなかったノストラダムスの予言を、世間は拡大解釈して騒ぎ立てた。アンゴルモアの登場も、予言に従ってというよりも、人々が地球の破滅という危機ですらエンターテインメントとして消費しようとする欲望によってであったのだ。これは現実に起こっていることなのだと、無視されようと必死に現代の人々に向かって叫び続けるノストラダムスが、現代の私達に訴えかけるものは大きい。コメディの名を借りながらも、さりげなく文明批評にまで発展してしまった本作は、侮れない。
ちなみに、最後に収録された番外編は、読者が抱えるであろう疑問に対する回答とも言えるようなネタで構成されていて、興味深い。なぜ、ノストラダムスはお金に困らないほどの暮らしができているのか。心の弱いノストラダムスが情報の宝庫であるインターネットにアクセスしても大丈夫なのか。答えは読んでのお楽しみである。
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