となりの柏木さん 霜月絹鯊 芳文社 全12巻
オタクな高校生、桜庭雄斗と、隠れオタクの美少女、柏木琴子が繰り広げるラブコメは、ついに最終巻を迎えた。12巻にして、話数は84話。ちょうど7年分の連載となった。
留学生ティナの恋人コウは、実は柏木さんの小学校時代の同級生で、オタクであることを周囲から気持ち悪がられていたコウに何もできなかったことを、柏木さんは気にしていたのだった。そんな2人の関係修復に一役買った雄斗は、その後はコウとも仲良くなり、すっかり恋愛についてのアドバイスをもらうまでになった。
これまでずっと、雄斗に対する恋心に気付かずにいた、というよりも雄斗に対して持っている気持ちが何物であるのかに気付かなかった柏木さんも、ティナからの本気の一言と、女子同士のお泊り会を経て、自分の気持ちについて確信する。周囲から見れば、もう付き合って当たり前の雰囲気の2人は、クリスマスの日に一歩踏み出した雄斗の告白をきっかけに、受験終了後に付き合い始めることを約束する。
最終巻のいいと思えるところは、無事付き合い始めて終わりではないという点だ。恋人となってからの初デート、2人の今後も続く温かい未来を想像させるような一時が描かれる最後の数話は、これまでのぎこちないやり取りと純粋な想いを振り返ると、何とも心温まるものだった。これまでに何度もあった、柏木さんを傷つけてきたこと、格好悪いところを見られてしまったこと、それらをすべて受け入れて、これから先も柏木さんと過ごしていきたいという雄斗の気持ちに最後は胸打たれた。
作中では約1年半という短い時間を、12巻かけて丁寧に描き切った作者に、今はありがとうございますと言いたい。
◇過去の記事◇
『となりの柏木さん(1)』『となりの柏木さん(2)』『となりの柏木さん(3)』『となりの柏木さん(4)~(7)』『となりの柏木さん(8)』PR