此花亭奇譚 天乃咲哉 一迅社 既刊1巻
人間に育てられた狐の物の怪、柚は、物の怪たちが暮らす町にある宿、此花亭で仲居として働くことになる。柚の指導係に就いた皐を始めとした他の5人の仲居や、宿を訪れた客との間で繰り広げられる物語。
主人公、柚の無邪気な性格に人々が翻弄されつつも、大切なことを教わっていく物語。全体的に流れる和風の雰囲気や、温泉のサービスショットは、作者の初期の作品『現神姫』を彷彿とさせる。ただし、殺伐としたシーンは一切なく、ゆったりとした時間の流れとほのぼのとしたストーリーが特徴。少し萌えが意識された『ARIA』と表現すれば良いのだろうか。忙しさに溺れてうっかりすると見失ってしまいがちな季節の変化、不器用でも精一杯お客のことを考えて働くことの大切さ、普段は心を閉ざした人が心を開くことの感動などなど、物語は優しさに満ちている。
百合要素は露骨には出ていないので、それほど読者を選ばない内容であろう。
カバーを外すと、おまけ漫画あり。
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