ローゼンメイデン PEACH-PIT 集英社 既刊3巻
怪しい通信販売の商品をギリギリのところでクーリングオフするという趣味を持った引きこもりの中学生、桜田ジュンは、謎のダイレクトメールに返信したことをきっかけに、動き、意志を持った存在であるアンティークドール、ローゼンメイデンと出会う。少女人形が至高の少女「アリス」を目指して戦うアリスゲームや、人間と人形という異質なもの同士の心の交流を描く物語。一度連載を終了した後、新たな形で連載を再開。今度の設定はパラレルワールド。「まきます」に丸を付けてダイレクトメールを返信し、ローゼンメイデンと出会った世界のジュンが、「まきません」に丸を付けた世界に生きる、大学生のジュンに助けを求める。「まいた世界」と「まかなかった世界」の2つが交差するところで、新たな物語が紡がれる。
「まかなかった世界」のジュンは、高認に合格し、大学への進学を決めるが、自分の居場所を見つけられず、自分の殻に閉じこもった毎日を送っていた。世間の風当たりは厳しく、自分の過去を後悔する念が日々深まる。しかし、ローゼンメイデンと出会うことで、ジュンは徐々に自分が持つ力の可能性、未来を自ら切り開く勇気を得ていく。そして、ジュンの中に目覚めたのは、今まで思いもしなかった、「この世界に留まりたい」という気持ちだった。ひとりひとりの人間は特別な存在ではないけれど、自分の可能性を信じて未来に向かおうとする努力は尊いものだ。そんなメッセージに溢れた、温かいストーリーが3巻までの魅力。「まかなかった世界」のジュンとローゼンメイデン達の間にも、新たな絆が形成される。
一方、悲しい運命を辿るのが、第7ドールの雪華綺晶。これまで、ドールズの戦いの暗躍者として、不気味な存在感を発揮してきた彼女だが、ある出来事を境に立場が一転。究極の美を追求する彼女の運命はいかに。
連載が一旦終了する前までの重要伏線も、序序に回収されていく段階に入った。第3巻は、ヤングジャンプ版としては、10冊目の単行本。今後の展開も目が離せない。
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