神のみぞ知るセカイ 若木民喜 小学館 既刊8巻
ギャルゲーの世界で「落とし神」の名をとどろかす高校生、桂木桂馬が、地獄から来たドジな悪魔、エルシィと共に、現実の女性攻略に奮闘する物語の第8弾。夏休みを迎えた桂馬は、田舎、街中と、普段とは少し異なったシチュエーションでの恋愛に臨む。
順調に巻を重ね、8巻に到達。アニメ化も決定ということで、今後知名度がさらに上昇するのではないかと思われる。
今回の攻略対象は、2人。桂木家の実家近くに住むお婆さん、日高梨枝子の若かりし頃の姿をした幽霊(?)、地味なラーメン屋を営む父と暮らす少女、上本スミレ。
日高梨枝子編は、人間が年老いていくこととはどういうことなのかを問いかける、これまでとは全く趣向の異なった話。今までの攻略対象だった少女は、心に隙間を抱えていても、それを埋めてもらうことで、再び前向きに生きていく勇気を得ていた。しかし、老人の場合は異なる。長生きするにつれ、徐々に自分の周りにいた大切な仲間達が姿を消していく。たった独りで生まれてきた人間が、また独りぼっちへと向かいつつある不安、悲しみは、そう簡単に収まるものではない。過去の人生を充実したものだったと振り返り、思い出を胸に穏やかに余生を過ごそうとする老人の姿を見て、主人公が逆に考えさせられる場面は見もの。
上本スミレ編では、本人だけでなく、父親の存在が外せない。父親は、自分のような人生を歩ませるのは、子どもにとって不幸なことだと思い、娘が店を手伝うのを反対する。娘の方は、何とか自分の大好きな店を父親と共に続けて生きたいと願い、新しいラーメンの開発に勤しむ。父娘の間に桂馬が入り、スミレとの恋愛要素は取り入れつつも、根底にあるのは親子愛だ。父は言う。
「親ってのは子供が自分と同じじゃ…
気が済まないんだよ…
自分が情けないほど……
子供が同じじゃ…
ダメなんだ!!」(p. 105)
まさか、ラブコメタッチの少年漫画で、こんな台詞を見るとは思いもしなかった。
絶好調の波に乗る本作品。主人公の決め台詞、「エンディングは見えた」を楽しみに、次巻を待つ。
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『神のみぞ知るセカイ(1)~(6)』『神のみぞ知るセカイ(7)』PR