魔法行商人ロマ 倉薗紀彦 小学館 既刊1巻
ロマとその家来(?)のミィノは、不思議な魔法具を売って歩く。売るといっても、お金を取るわけではない。2人が欲しがっているのは、人間の欲望(この物語では「クレシャ」と呼ばれている)。魔法具を手に入れた人間は、自分の望みを叶えることができる。しかし、思い通りの自分を手に入れた人々に待っているのは、必ずしもハッピーエンドではない…
1話ごとに主人公となる人間が現れる、オムニバス形式で進められる。
各話の主人公達は、ちょっとした、それでいて現実には起こり得ないような望みを持つ。そんな折に、ロマとミィノが絶好のタイミングで現れ、魔法具を与える。人間は、いとも容易く自らの夢を叶える。しかし、夢が現実と化すことで、主人公達に変化が訪れる。人の欲望には際限がなく、1つ目標を達成したら、すぐにもっと大きなことを期待する。積み重なった欲望の山は、来るべき時に、ガラガラと音を立てて崩れてしまう。引き時を見抜けなかった人間に待っているのは、それまでとは打って変わったような地獄である。ミィノの口癖、「人間てバカだよね♪」が、心に響く。
それでも作者は、人間の欲望というものに対して、否定的な見方だけをしているわけではない。それが、この物語に深みを与えている。欲望は、時に人間に活力を与え、生きるための力になる。それを、作者は「生命の燃料」と表現している。人間の欲望の果てにあるのは、希望か絶望か、天国か地獄か。2巻以降も注目していきたい作品である。
ちなみに、本作品はWEBコミック「クラブサンデー」で連載されている。最新話などの情報は、
クラブサンデー内のページで配信される。
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