魔法行商人ロマ 倉薗紀彦 小学館 既刊3巻
魔法使いのような怪しい風貌の少女、ロマと、家来のミィノは、魔法具を無料で配る。対価は、人間の欲望(クレシャ)。欲望と葛藤する人間の運命は、吉と出るか、凶と出るか。
毎回雰囲気の異なる表紙で、ドキッとさせられる作品(裏表紙の基本デザインは同じ)。今回は、前の巻の最後を彷彿とさせる、ロマの悲しげな表情のアップ。
これまでの2巻では、バッドエンディングの場合、救いようのない展開が多かったのに対して、今回は各話の主人公にとって、望みをつなげられるような結末を迎える話が多かった。欲望は回収されても、出口のない異世界に閉じ込められてしまったり、元に戻れなくなってしまったりといった、悔やんでも悔やみきれない結果は回避できた主人公達が多かった。第12話「メルーダの砂時計」がその典型、さながら映画版の「時をかける少女」を連想させるような青春物だった。主人公達が、自分にとって大切なものに気付き、現実に向き合うことを決意する結末は、琴線に触れることはあるけれども、その分ダークさは減少。
ここまでの15話を通して見ると、主人公が欲望とうまく付き合い、最悪の展開を回避するには、他人を思う気持ちが鍵となる。他人を大切に思うこと、他人から大切に思われることから、欲望の海に己を見失わずに済んだ主人公達は多い。では、ただひたすら誰かのために強い欲望を抱えた人の場合、特に、願われている当人にとっては迷惑というすれ違いが起こる場合には、どんな結末が訪れるのだろうかと考えてしまった。
なお、前回少し触れられた、欲望回収の目的、アトマン復活の真相はおあずけ。こちらは、今後の進展に注目。
◎過去の記事◎
『魔法行商人ロマ(1)』『魔法行商人ロマ(2)』PR