コインランドリーの女 清原紘 角川書店 全1巻
街の一角にあるコインランドリーを経営するのは、謎の女、真魚子。コインランドリーを訪れる童顔の女子大生、田中晴とともに、真魚子は街に暮らす様々な変態に出会う。表題作に加え、ショタコンの女子高生に焦点を当てた「鈴木姉妹」も収録。
冒頭だけ読むと、ホラーのような雰囲気が満点。妖気が漂うようなコインランドリーに入ると、洗濯機や乾燥機から髪の長い女が出て来る。しかし、読み進めていくにつれて、変態を交えたシュールなギャグ漫画としての体裁を為していく。連載は、少女漫画誌の『ビーンズエース』だっただけに、絵は非常に綺麗。この絵で普通の少女マンガをやっても立派な作品になりそうだけれども、作者が選択したのは、別の道だった。綺麗な絵で描かれる変態達というのも、なかなか面白いと思う。
一見可愛らしい晴は、実はストーカー癖を持ったトンデモなお人。その晴のことが好きで言い寄ってくる自称「王子」は、王子を気取った無職で、ストーカーする晴をさらにストーカー。王子の父は、通称「組長」の名を持つ怖い顔の持ち主ながら、しょうもないドM。
店の常連達は、それぞれのとてつもなく強い個性を発揮しつつ、真魚子を振り回し、また、真魚子に振り回される。晴も、個性派達に向かって「嫌ーッッ!!」とか言いつつ、本当の意味での拒絶(=交流を絶つ)はしない。そこには、差別や偏見とも、すべてを受け入れる無条件の愛とも、徹底的な無関心とも異なった人間関係が繰り広げられる、まったくの異次元の懐の深い世界がある。
そんな面々に囲まれる真魚子は、客を驚かせようとして、洗濯機や乾燥機に隠れてみるなど、ちょっくら変わった行動をすることはあっても、基本的にはオタクの素質を持った女性に過ぎない。奇怪な行動を取ってしまうのも、独りコインランドリーを経営する者としての寂しさゆえのこと。私個人としては、真魚子のような、美貌を持ちつつ、変な性格をした女性に対して、不思議と魅力を感じてしまう。さて、そんな私は、「変態」としてコインランドリーの常連客らの仲間に入ったほうが良いのだろうか…
PR