幻影少年 万乗大智 小学館 既刊4巻
人の心にダイブする力を持った少年、秋月サトワと、その下宿先で喫茶店を営む少女、小川水音は、「心の探偵社」を開いている。彼らと、そこを訪れる依頼人との心の交流を描いた物語の4冊目の単行本。
1話目の「解放」は、交通事故の被害者でありながら、自分の息子の命を救えなかったことに罪悪感を抱いて苦しむ父親の物語。それに対して、3話目の「一歩」は、交通事故の加害者の立場になってしまった青年を登場させるなど、考えさせる構成になっている。
世の中、完璧な勧善懲悪や因果応報によって動いているわけではない。理不尽な辛い目に遭う人もいれば、悪事を働きながら逃げ果す人もいる。そのような世の中をどのように解釈すれば良いのか。人間が幸せになるための条件とは何か。ヒントは、随所に散りばめられたサトワからのメッセージ、そして、作者によるあとがきの中にある。
事件を通して少しずつ絆を深めていくサトワと水音の姿を見守るのも、本作を読むもう1つの楽しみ方だ。
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『幻影少年(1)』『幻影少年(2)(3)』PR