SHIROBAKO 〜上山高校アニメーション同好会〜 作画/ミズタマ・原作/武蔵野アニメーション・脚本/杉原研二 アスキー・メディアワークス 既刊1巻
現在放映中のTVアニメ「SHIROBAKO」。高校時代にアニメーション同好会を設立し、文化祭で自主制作アニメを上映した女の子達5人は、約3年後社会人や大学生となり、皆で一緒にオリジナルアニメを作るという夢に向かって日々努力する。5人を中心にしつつ、他にも多くの人物を登場させ、アニメ制作の現場の喜びや苦悩を描いた骨太の人間ドラマである。漫画版は、そんな5人の高校時代を描いたスピンオフで、主人公には、絵を描くのが好きだが引っ込み思案で自分の絵に自信を持てない女の子である安原絵麻を据えている。第1巻は、アニメーション同好会の設立に至る過程と、5人による自主制作アニメ「神仏混淆七福陣」の制作が動き出すところまでを扱っている。
読んでみてまず思ったのが、オリジナルのアニメに非常に忠実で良質なスピンオフであるという点である。原作は同じく「武蔵野アニメーション」で、脚本家も別に用意し、作画もアニメの作画を意識した描き方で、アニメを観ている人間としても全く違和感を感じない。しずかがかつて声優を目指すために演劇部に所属していたが、アニメーション同好会の本気度を見て退部を決意したというエピソードは、アニメの中でしずかがお芝居に関心を抱いている部分とつながるものであり、なるほどと思った。美沙が絵麻の絵に触れていく中で3DCGへの道を決意する場面も、アニメの場面を補足するようになっている。アニメの第1話に出てくるシーンも取り入れてあり、アニメのファンが十分に楽しめる内容になっている。作画のミズタマは、これまでも女の子が多く登場する作品を描いてきたが、ここまで原作の絵を丁寧に再現しつつ、アニメでは描かれていないストーリーを描き込める人物は稀有ではないだろうか。素直に感動してしまった。
絵麻を主人公にすることで、アニメとはまた少し違った視点で5人の関係を垣間見ることができるようになっているのが、漫画版の魅力である。アニメの主人公であるあおいとは、対照的な性格で釣り合いをとれる部長・副部長のコンビを組み、声優志望のしずかとは、アニメに向かう真剣な気持ちという面で心が通じ合い、3DCG志望の美沙との間には、絵がわかる者同士ならではの絆が生まれる。また、アニメでは詳細に描かれることのなかった、アニメの道に進むことに反対する父親を説得するという課題も丁寧に描かれるのではないだろうかという期待がある。
アニメ放送は3月で2クールの放送を終えるため、漫画版はこの先どの程度続くのかは不明だが、期待を大きく上回る内容で非常にわくわくしている。