勤しめ!仁岡先生 尾高純一 スクウェア・エニックス 既刊4巻
主人公、仁岡隆志は、子どもが嫌いな中学教師。いつか子どもを滅ぼそうと企んでおり、宿題や補習といった手段によって生徒を苦しめることに喜びを見出す。しかし、仁岡の勤める学校は、変な人間ばかり。不良を気取った真面目キャラの生徒、浅井。その浅井をかわいいと言い、浅井に不良キャラを演じさせておくクラスメイト。イマドキを意識しつつも、逆に現代から取り残されているような生徒、今江。男女問わずかわいい生徒に対して異常な執着を見せる女教師、河原。かわいい女生徒と恋愛しようと奮闘する校長。
そして、中学生や同僚になど興味のない仁岡が、浅井、今江、河原に惚れられて… 学校を舞台にしたドタバタ劇が始まる。
4コマ漫画としては、非常によくできている。仁岡以外の人物達の、勘違いに次ぐ勘違いや、会話をとんでもなく飛躍させた受け取り方、それに対する仁岡のツッコミが、この漫画の生命線と言えるだろう。それでいて、各4コマが繋がって1つのストーリーを作っているところが驚き。
また、本作のもうひとつの面白さは、善と悪といった二項対立的な性格がひとりの人間の中に並存しているところである。
[善と悪]仁岡の性格は、本当に屈折している。中学時代を勉強に捧げ、友人と呼べる者とも出会えなかった。それゆえに中学生を憎んでいる。仁岡は、子ども嫌い、子どもを滅ぼすだの、一般的には批判されそうなとんでもない性格を持った教師である。しかし、生徒が熊に襲われそうになったときには、自分が囮になって生徒を助けようとするし、河原がかわいくない生徒を拒否したときには、「確かに僕はガキが嫌いです …ですが差別はしません 全てのガキを等しく嫌ってます」と、言ってみせる。何と真っ当な教師であろうか。特に、浅井がかわいいと堂々と公言し、生徒との恋愛に躊躇しない校長と仁岡とのやり取りを見ると、仁岡が教師としてまともな人間に見えてくる。
[良い子と不良]一方、生徒はというと、自称不良の浅井は、宿題をきちんとやったり、人知れず夏休み中の教室の掃除をしたりする、びっくりするほどの優等生ぶりも発揮する。
[新と旧]今江の言葉は、現代風のしゃべり方の上にかつての流行語を取り入れた形になっている。
[真面目と不真面目]普通の生徒として現れる上原は、勉強はサボるし、辺り構わぬ毒舌ぶりを発揮する。それでいて真面目なところもある。
教師とは何か、不良とは何か、普通とは何か。そんなことを考えてしまう(これは単なる深読みか?)。
単行本が出るペースが遅く、2006年に第1巻が発売されて以来、2009年の夏時点で4巻まで。
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