坂本ですが? 佐野菜見 エンターブレイン 既刊2巻
2013年の漫画界の話題を集めた作品が、これである。県立学文高校の1年2組には、入学早々から学校中の注目を集める生徒がいた。その生徒こそが、坂本である。彼の行動は、スタイリッシュそのもので、人々を魅了して止まない。女子生徒からの視線も熱く、当然それを良く思わない輩もいる。しかし、坂本の行動は凡人の予想を遥かに凌駕するもので、不良の生徒や見栄っ張りな教師など、坂本を陥れようと企む者たちの干渉をものともしない。不良の生徒も、坂本のことを恐れたり、優秀さに脱帽して、手を出してこない。
本作の体裁はギャグ漫画ということであろうが、一般的なギャグ漫画と比べて作画が極めて端正で巧いところに特徴がある。不良の生徒なんて、そのまま少年チャンピオンの漫画に登場してきてもおかしくないくらいの出来栄えである。時にリアル、時に美しい作画があるからこそ、数々の名場面が生まれ、常に予想を上回る坂本の行動に感心させられたり、思わず笑ってしまったりするのであろう。
坂本の行動は、読者の一歩二歩先を行くものばかりである。女子に争わせながら、心理学の理論を検証してみたり、わざと教師を怒らせて教室から出て行かせておいて、怪我した雀にご飯を与えたりと、最後まで読まないとわからない。読者は謎解きをしているかのような感覚に襲われる。そしてまた、いわば「オチ」になる坂本の真意がわかるコマは、決まって大きなコマで、いちいち大袈裟に描かれる。作画の素晴らしさとも相俟って、作中の人物同様に感心してしまったり、思わず「これは現実にはあり得ないだろ!」と突っ込んでしまいたくなったりするのだ。
常軌を逸した行動も、極限まで行けば「スタイリッシュ」の領域に到達する。作者の発想力に感嘆させられつつ、今後も続いて欲しいと願う作品だ。
PR