ささめきこと AIC制作 2009年10月~12月
梅枝高校1年生の村雨純夏は、勉強ができ、運動神経も抜群。ところが、背が高く、男勝りな自分にコンプレックスを持つ。そして、同性の親友、風間汐に恋心を抱いている。一方、風間は可愛い女の子が好きという性格。すぐ近くに、自分のことを好いてくれる女子がいるにもかかわらず、風間はそれに気付かない。純夏は、親友ではあっても恋愛対象としては自分のことなど眼中にない汐の一言一言に、時に傷つき、時に元気を与えられ、日々を送る。ある日の放課後、2人は、自分たちの教室で女子生徒同士がキスをしているのを目撃してしまう。その正体は、同じクラスの蓮賀朋絵と、当麻みやこだった。やがてその4人は、女子のための部活、「女子部」を作ることを決める。
心理描写が丁寧で、時に切なく、時に笑えるシーンがある、メリハリの利いた構成が、物語に明るさを添える。序盤から中盤は、切ない展開も多かったが、第12話など、青春の1ページと言えそうな話も入り、恋愛部分に寄りすぎない展開となっている。また、妄想してハイテンションになる純夏の描写も面白い。
本作の重要テーマは、大切なものは実はすぐ近くにあって、案外見落としてしまうということ。途中、純夏はひょんなことから同級生のあずさから、同人誌の制作を手伝わせられてしまう。その頃から、汐は純夏のことが気になってしまう。汐が純夏への気持ちに気付き始めたかというところで、物語は終わりを迎える。原作は読んでいないが、単行本の紹介によると、この先、2人の関係に変化が生じてくるという。非常に円満な終了を迎えた本作だが、第2期もあり得るのかと考えてしまった。
また、同級生の朱宮や、汐の兄、範夫の存在も面白い。前者は人気女性モデル、後者は人気女性作家を装った男性である。ところが、この2人は女性から意図せぬ人気を得ることになってしまう。特に、朱宮の女装姿である山崎アケミは、汐の心を鷲掴みにし、純夏を悩ませる。
本来的には、悲劇的な要素に溢れた作品である。何しろ、純夏は汐が好き、汐は朱宮扮する山崎アケミに興味を持ち、朱宮は純夏のことが好き。さらに、同級生の女子、あずさも純夏のことが好きである。それぞれの想いの強さに違いがあるとはいえ、ここからでき上がるのは、片思いの連鎖である。それでも、本作はこれらの要素をむしろコミカルな要素へと昇華し、暗さを感じさせない作りになっている。
これを機に、原作への興味が刺激される作品であった。
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