神のみぞ知るセカイ 若木民喜 小学館 既刊9巻
ギャルゲーの「落とし神」こと桂木桂馬が、現実の女性攻略に奮闘するラブコメも、9冊目。ヒロインは、勝つことへのこだわりを持った将棋少女の榛原七香と、名家出身のお嬢様の五位堂結の2人。
アニメの制作スタッフも決まり、絶好調の本作。今回は、初めて前巻から2か月での発売となった。
1人目のヒロイン、榛原七香は、これまた魅力的な人物。奨励会入りを目指そうとするも、勝負に負けると大きなダメージを受け、心に隙間ができてしまうということだ。勝気な言動と関西弁がよく調和していて、殊勝な性格をうまく彩っている。内面に不安を抱えていても、つい強がってしまうヒロインは、少年漫画の定番中の定番と言えよう。そういえば、以前どこかで、男に「守ってあげたい」と思わせるには、「強がり」「生意気」「やせ我慢」の3つがキーワードになると読んだことがある。この人物、すべてが揃っているな。
2人目のヒロイン、五位堂結は、厳しい家に生まれ育ち、悩みを抱える少女。桂馬は、彼女を家から救い出すナイトとなり、攻略を目指す。ここまでは、七香編とは対照的に、少女漫画のようなストーリーかと思いきや、桂馬と結の身体が入れ替わってしまうという事態に。今回の表紙の訳は、こんなところにあったのだ。いつもの桂馬とは異なった言動と行動に驚く周囲の反応は、面白い。結編の解決は、次巻に続く。
今回も桂馬は考える。なぜ、人は今の自分に満足することができないのか。なぜ、人は現状以上のことを求めて、もがき苦しむのか。実は、この問題は、4巻の小阪ちひろ編で主人公が意識したもの。現実世界との間に距離を取って生きている桂馬が、現実の女性との相互作用を起こしていく中で、世界の捉え方をどう変化させていくのか。これも、本作の重要テーマの1つ。
その他にも、なぜ攻略した女性の記憶がおぼろげながらも残っているのかという謎に対して1つの解釈が示されるなど、イベントも盛りだくさんな9巻。単行本2桁台突入を目前に控え、ストーリーも盛り上がりを見せる。
現在、作者は大忙しらしく、巻末のおまけページでは、「ボクが死なないように祈っててください」との記述が… うぅむ、心配。
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