DearS PEACH-PIT メディアワークス 全8巻
200X年、宇宙から来たUFOが地球に不時着する。そこには、宇宙人が乗っていた。彼らは地球人としての市民権を獲得し、日本国籍を得て、日本で暮らすことになった。彼らは、「親愛なる」という意味をこめて「ディアーズ」という呼び名を与えられた。ディアーズの人気は凄まじく、連日メディアが取り上げるほどの注目度であった。
ある日、カプセルに入ったディアーズを運ぶトラックが事故を起こし、カプセルが1つ行方不明になる。そのカプセルから出た女性のディアーズを、高校2年生の幾原武哉が見つけるところから物語は始まる。
武哉はそのディアーズをレンと名付け、レンは武哉の家で暮らすことになる。
ディアーズとは、実は故郷の星では奴隷として扱われていた種族であり、レンはその中でも「ゼロナンバーズ」と称される欠陥奴隷であった。美しく、スタイルも良い外見とは裏腹に、ディアーズは悲しい運命を背負った宇宙人なのであった。
『Rozen Maiden』や『しゅごキャラ』で有名なPEACH-PIT初の長期連載作品。絵は他作品に比べていかにも男性誌向けのところがあり、そこに抵抗感を持ってしまう人もあろう(実際、自分がそうだった)。
しかし、話は思いのほかシリアスで、いろいろ考えさせられる内容になっている。人を好きになるとはどういうことか、自分の意志とは何なのか?異質なものと暮らすとはどういうことなのか?
それでいて、コミカルな部分とシリアスな部分のバランスが取れている。特にコミュニケーションに関するミスは、よく練られていて、面白い。ディアーズ達は、故郷の星では奴隷種族という地位にいたため、その環境に適応し、自らの意志というものは、とっくの昔に忘れてしまった。だから、レンは自分の主人である武哉の言うことは何でも聞こうとする。武哉は理想的な美少女奴隷を手にしたわけである。しかし、武哉はレンが奴隷ゆえに自分に尽くしてくれるという状況に、納得がいかない。それゆえに、迷い続けるのだった。その葛藤は、物語の大きなテーマの1つである。
武哉を取り巻くディアーズは、武哉との関わりの中で、徐々に影響を受け、心を動かされていく。その変化が最も如実に現われるのがラストであり、読者としては胸打たれる。
密かに、私がPEACH-PIT作品の中で最も評価している作品である。