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自分が読んだ漫画の記録です。昔読んだものから最近のものまで、少しずつ揃えるつもりです。 コメント、トラックバック、お気軽にどうぞ。
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魔法行商人ロマ 倉薗紀彦 小学館 既刊2巻



欲望を抱えた人間のもとに、魔法具を売り歩く少女、ロマとその手下、ミィノが絶好のタイミングで現れ、人間の欲望を叶える。2人が求めるのは、金銭ではなく、人間の欲望(クレシャ)。欲望に溺れるか、それ以上の大切なものに気付くのかは、それを手にした人間次第。

「ちょっとダークな青春ファンタジー」(帯の記述から)第2弾。今回も、バッドエンディングあり、ハッピーエンディングありの5話収録。前巻と比べると、各話の主人公たちが、自らの欲望と戦い、葛藤する様子が多く描かれる。葛藤した末誘惑に打ち勝つ主人公が、希望を見出すという展開が主流に。1巻でバッドエンディングが多かったことの反動か。

そして、注目は第10話。いつも表情に乏しく、どちらかというと背景に近いような存在のロマの、寂しげな表情が垣間見られる。人間の欲望が肥大した末に、絶望に行き着いた人間に対しても、冷酷な姿勢で接し、無表情で欲望の塊を回収する彼女。その行動の裏には何が隠されているのか。第2巻には、欲望の回収に失敗する話が多く収録されているにも関わらず、欲望の回収は順調に進んでいるよう。目的である王魂復活までのカウントダウンが始まった。いよいよ、物語の真相が本格的に明かされる日が近付いているのかもしれない。

★過去の記事★
『魔法行商人ロマ(1)』
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数学ガール 原作:結城浩 作画:日坂水柯 メディアファクトリー 上下巻



数学好きの「僕」は、高校に入学し、ミルカさんに出会う。彼女も数学が好き。その数学力は「僕」をはるかに凌ぐものであり、性格はクールかつミステリアス。高1の春、突如彼女が数列で話しかけてきて、それに「僕」が応えたのをきっかけに、「僕」はいつの間にかミルカさんに最も近しい男子となる。一方、「僕」は、同じ中学校出身のかわいらしい後輩であるテトラちゃんに、放課後数学を教えている。「僕」は明晰な思考が要求される数学に魅了されつつも、2人の「数学ガール」に対する「僕」の気持ちは掴みどころなく、もやもやしていく。

日本語のタイトルからすると、「ミルカさん=数学ガール」というイメージが強くなりそうだが、その下に付いている英語のタイトルは、"Mathematical Girls"。「僕」に関わる2人の少女こそが、「数学ガール」である。ラブコメと言ってしまえばそうだろうが、それ以上のものを感じさせる作品。数学を扱うシーンは至って真面目。そして、その過程で見せる2人の数学ガールの行動に、「僕」の心は揺れ動いていく。数式を明晰に解くことができても、人間の心模様は時に、理解できない混沌としたもの。その対照が、本作の魅力。作画はシンプルな線を使って描かれていて、数学の明晰な論理やシンプルな式を求めるという物語の内容に非常にマッチしている。放課後の図書館、書店、プラネタリウムといった、静かな空間が舞台となるという点からみても、相性が良い。数学、ラブコメのどちらからでもアプローチ可能な物語。

「僕」がテトラさんからの問題に対して解答を示す過程や、ミルカさんに数学を教えていく過程で、いくつかのトピックが扱われる。式を変形させたり、別の見方を取り入れたりすることで、ひとつの数式に含まれる様々な側面を垣間見ることができる(例えば、数列を複素数平面上に表現するなど)。また、曖昧な言葉を使っていては見えてこないものが、明確に言葉を使おうとすることで、はっきりと現れてくる(例えば、「なぜ1は素数に含まれないのか」に対する解答)。その中で、複数の数式同士の関係が見えてきて、数学の世界が広がる。私としては、特に上巻のトピックには感心させられることが多かった。

上巻は、数列、素数など、高校2年生レベルの知識で何とかなる事項を扱っている。トピックも複数。項とは、因数とは、文字はどのように使うかなど、わかっているようで本当はよくわかっていないような基本事項も取り上げられる。それに対し、下巻はフィボナッチ数列の一般項を求めるということに焦点が置かれ、内容も一気に高度になる。正直、わからなくて読み飛ばしてしまった箇所もある。それでも、数学の魅力は十分伝わってくるので、数学への親しみの度合いや知識の量に関係なく、楽しめる内容ではあろう。キスシーンでの2人の距離感を「半径ゼロ」の「たった一点から成る円」と描写するなど、このような作品ゆえに効果を持つ表現も面白い。
E'S 結賀さとる スクウェア・エニックス 全16巻



第3次世界大戦を経た世界は、国家の力が弱体化し、代わりに企業が人々の生活に大きな影響を及ぼすようになった。このような時代の中、新興企業「アシュラム」は、突然変異によって生まれ、人々の恐怖の対象となっている超能力者を集め、巨大企業として支配を広げようとしていた。「アシュラム」の特殊能力者部隊に所属する戒=玖堂は、スラム街を形成する土地、ガルドでの任務中に仲間と戦闘になり、倒れているところを勇基=篤川と明日香=篤川の2人に救われる。3人で生活し、便利屋である勇基のもとに舞い込む仕事を通して、ガルド内で起こる事件に関わっていくうちに、戒は自らが所属していた「アシュラム」のやってきたことに疑問を覚えるようになっていく。ガルド地区で支持を得て、次期教皇を狙う枢機卿ギベリーニ、旧教皇マルティヌス14世の下に集まったゲリラ、巨大企業アシュラムの指揮官、曳士=鷺宮、その配下で働く人々、それぞれの思惑が複雑に絡み合う中、物語は進む。戒は、「アシュラム」に妹の光流を人質として取られていた。戒と光流をめぐる謎が徐々に解明され、戒が過去の記憶を取り戻したとき、世界は破滅へのカウントダウンを始める。足掛け12年の長期連載は、現在のところ「月刊Gファンタジー」の最長記録。連載当初の中高生が30歳に近づいていることになる。エニックス時代から続く漫画が完結を迎えた。

物語は、初めの部分が掴みづらい。時と場所の変化が多く、それぞれの人物がいったい何を求めているのかが、はっきりとしてこない。しかし、途中からある程度物語の設定がわかるようになってくると、どんどん引き込まれていく。権力闘争の裏に隠された、能力者の苦悩、生きる意味への問い、人間の身勝手さについて考えさせられる。人間が、能力者を恐れながらも、自らの美しさと寿命を維持するために能力者の身体の一部を移植したり、傭兵として能力者を使用しているという現実など、随所で語られる能力者差別の描写は、異質の者が生きる意味について問いかけるものである。

登場人物たちも、それぞれが非常に魅力的である。主人公格の戒に、独自の哲学を持ちながらも人情にも厚い勇基、最後までぶれない魅力的なヒロインだった明日香、中盤からこれまた魅力的なヒロインとなるマリア、最後まで孤高を貫くこととなった「アシュラム」の最高指揮官である曳士、悲運を辿ることとなったベルヴェディア姉弟、生きる意味を見出そうともがいたマキシム。皆の思いが様々な場面で描かれ、物語を大きく盛り上げていく。

物語の終盤では、主人公である戒の現実世界での戦いと地球の行く末がシンクロする展開の中、ガルドの持つ意味、戒の妹の光流の存在の謎が明かされる。光流が関わった人物はすべて狩ることで自らの責任を果たそうとする戒は、次々と「アシュラム」の人間を倒していく。第1巻からいた人物も多く、各々の散り際は涙なしには読めない。

絵が非常にうまいのが本作の魅力。綺麗な絵の中に時折入り混じった崩した絵も、けっして手抜きに見えず、全体とバランスを取りつつ効果的にコミカルなシーンの演出に一役買っている。戦闘シーンの迫力もありながら、繊細な心理描写も忘れない。もう1つの特徴が、豊富な語彙。登場人物の台詞やト書きに出てくる言葉から、作者の文才が覗える。

文学的にも、旧約聖書、精神分析、エディプス・コンプレックスなどなど、分析のネタは豊富にある。難解なストーリーと並んで、読み応えがある。とは言いつつも、私もまだまだ理解が十分でないところが多いのが現状である。
魔法騎士レイアース CLAMP 講談社 全3巻



魔法騎士レイアース<新装版> CLAMP 講談社 全3巻



東京タワーでの社会科見学で偶然にして出会った3人の私立中学生、獅堂光、龍咲海、鳳凰寺風は、異国の地、セフィーロに召喚される。セフィーロで最も大切なのは、強い気持ち。3人は、伝説のマジック・ナイトとして、その国の姫、エメロードを救うために戦うことになる。

『なかよし』に連載されていた作品であるにも関わらず、到底少女漫画とは思えないストーリーの作品。3人は、召喚の理由もわからないまま戦い、まるでRPGかのように武器や防具をレベルアップさせ、エメロード姫をさらった張本人であるとされる、神官ザガートと相見えるという展開。3人は、魔神(マシン)という巨大な存在と一体化し、敵と戦う。その後、『カードキャプターさくら』の連載を経て、作者CLAMPが講談社の中では『マガジン』に異動になったのもわかる気がする。

物語の終盤で、3人が召喚された本当の理由が明らかになる。マジック・ナイト召喚の裏には、善悪の二項対立によって単純に語ることのできない問題が、隠されていたのだった。もし、世界の中で孤独に自分の使命を果たそうと腐心してきた人が、皆と同じように人間として生きる道を選んだらどうなるのか。1人の人間を救うために、世界のすべてを敵にまわす必要があったらどうするのか。このような問いを投げかける形で物語は終了し、第2部へと続く。
さよなら絶望先生 久米田康治 講談社 既刊20巻



ネガティブ教師、糸色望と彼が担任するクラス、二年へ組の生徒たちが繰り広げるギャグ漫画も、ついに大台の20巻に突入。

帯には、「誰も止めてくれないからもう20集じゃないですか!!」の記述。一見様が入りづらくなっているのではないかというネタがあったのが11巻だった。本作は、それ以来まだまだ続いた。相変わらず、今回も「没個性」ならぬ「ボツ個性」(発揮すべき場所でなく発揮される個性)、「文化祭」ならぬ「分化祭」(細分化が進んだ世界の様子)など、絶妙なネーミングセンスでもって、世の中を風刺するネタは健在。さらには、連載200回目となる記念の回には、物事が続くことで逆に増えていくレガシーコストの話を取り上げるという秀逸ぶり。しかも、連載が5年も続けば、連載当初に中学生だった読者が成人するという台詞から、時の流れをしみじみと感じる。私は連載当初からの読者ではないが、該当する人にとっては大変な月日であろう。

隠れキャラや、以前のネタに登場した人物など、長く親しんできた読者に対するサービスが充実しているのはありがたいが、顧客の新規開拓を進めたいのも本音であろう。でも、アニメ4期に期待を懸けているところを見ると、まだまだ大丈夫なのかな。


◆過去の記事◆
『さよなら絶望先生(1)~(19)』
ローゼンメイデン PEACH-PIT 集英社 既刊3巻



怪しい通信販売の商品をギリギリのところでクーリングオフするという趣味を持った引きこもりの中学生、桜田ジュンは、謎のダイレクトメールに返信したことをきっかけに、動き、意志を持った存在であるアンティークドール、ローゼンメイデンと出会う。少女人形が至高の少女「アリス」を目指して戦うアリスゲームや、人間と人形という異質なもの同士の心の交流を描く物語。一度連載を終了した後、新たな形で連載を再開。今度の設定はパラレルワールド。「まきます」に丸を付けてダイレクトメールを返信し、ローゼンメイデンと出会った世界のジュンが、「まきません」に丸を付けた世界に生きる、大学生のジュンに助けを求める。「まいた世界」と「まかなかった世界」の2つが交差するところで、新たな物語が紡がれる。

「まかなかった世界」のジュンは、高認に合格し、大学への進学を決めるが、自分の居場所を見つけられず、自分の殻に閉じこもった毎日を送っていた。世間の風当たりは厳しく、自分の過去を後悔する念が日々深まる。しかし、ローゼンメイデンと出会うことで、ジュンは徐々に自分が持つ力の可能性、未来を自ら切り開く勇気を得ていく。そして、ジュンの中に目覚めたのは、今まで思いもしなかった、「この世界に留まりたい」という気持ちだった。ひとりひとりの人間は特別な存在ではないけれど、自分の可能性を信じて未来に向かおうとする努力は尊いものだ。そんなメッセージに溢れた、温かいストーリーが3巻までの魅力。「まかなかった世界」のジュンとローゼンメイデン達の間にも、新たな絆が形成される。

一方、悲しい運命を辿るのが、第7ドールの雪華綺晶。これまで、ドールズの戦いの暗躍者として、不気味な存在感を発揮してきた彼女だが、ある出来事を境に立場が一転。究極の美を追求する彼女の運命はいかに。

連載が一旦終了する前までの重要伏線も、序序に回収されていく段階に入った。第3巻は、ヤングジャンプ版としては、10冊目の単行本。今後の展開も目が離せない。
あまんちゅ! 天野こずえ マッグガーデン 既刊2巻



大木双葉は、東京から伊豆に越してきた、内気な高校1年生。入学式前にふと訪れた海辺で、海の広さに魅せられる。そして、入学式の日、同級生の小日向光(通称「ぴかり」)に声をかけられたことをきっかけに、ダイビング部へあれよあれよという間に仮入部することになる。しかし、双葉(「てこ」のあだ名を付けられる)は、ダイビングの魅力とぴかりの明るさに惹かれ、ダイビング部へ入部することになる。ダイビング部の顧問の火鳥真斗や、双子の姉弟である、「姉さん」先輩と「弟くん」先輩といった個性豊かな仲間に囲まれ、てこは徐々に自分の居場所を見つけていく。

海という大自然の魅力を存分に伝える作品。ダイビング初心者であるてこが水と格闘する過程も丁寧に描かれている。しかし、『浪漫倶楽部』『ARIA』といった作者の他作品と比べると、物語の舞台は不思議なことが一切起こりえない、あくまでとことん日常的な世界である。そんな中で、他人のちょっとした気遣いや優しさ、心情の変化に焦点を絞りつつ、物語が紡がれていく。その分、登場人物達には、『ARIA』の主人公、水無灯里のような超人的な明るさやコミュニケーション能力があるわけでもなければ、『浪漫倶楽部』の主人公達のような底なしの優しさが湧き出てくるわけでもない。あくまで等身大の人物の繊細な感情を描くという、天野こずえ作品の中では比較的珍しいタイプの作品になっている。

一方、コミカルな描写も挟んだ展開は、本作の大切な要素。メリハリの効いたコマが、全体に花を添える。

物語はまだまだ始まったばかり。主人公2人の青春に、これからどんな思い出が刻まれていくのか。


■追記■
最近、更新が鈍っています。
頻繁に訪問してくださっている方々、ごめんなさい。
勤しめ!仁岡先生 尾高純一 スクウェア・エニックス 既刊4巻



子ども嫌いの中学教師、仁岡が、真面目な自称不良の浅井や、10年以上昔の流行感覚を持った自称最先端ギャル今江、かわいい人好きの女教師の河原、どうしようもない校長とともに繰り広げる、破天荒なギャグ漫画の第2弾。今回は、これらの面々に加え、またも個性的な新キャラが2人登場する。

今までひたすらツッコミ役に徹してきた仁岡が、良い意味でキャラを崩してきたのが、今回の見どころ。「ガキを滅ぼす」という、お決まりのの大義名分を抱えつつ、彼はいつの間にか球技大会にのめり込んだり、冬休みの宿題で生徒を苦しめようとして、サンタの格好をして滑ってしまったり・・・「本当のところアニキは誰よりもガキ」と、仁岡のことを言う浅井の言葉には、恐ろしいほどの説得力がある。

さて、そんな中学校に新たな英語教師が赴任する。何と、この学校には1年ほど英語教師がいなかったらしい。このような驚くべき事態にも、もはやそれほど驚きを感じなくなってしまった自分は、この作品の勢いに乗せられ、感覚が麻痺してしまったのだろうか。その教師の性格がまた、本作において非常に良い味を出しているように思う。彼は河原の弟で、姉と同様に中学生の純粋さに惚れ込むも、恋愛関係にまでは進展させるつもりはないと断言する。それは、どんなに美しい中学生の心も、自分の美しさには敵わないという、ナルシストな思考に由来する。善と悪、大人と子どもといった二面性が仁岡の特徴なら、英語教師、河原梅夫は、通常と狂気というさらに強烈な二項対立を内包した人物である。狂気が1周することで行き着く先は、曲りなりのノーマルなのである。

もう1人の新キャラが、仁岡のクラスの女生徒、前田だ。彼女は、中学生当時の仁岡を彷彿とさせる性格の持ち主。ひねくれ者の仁岡を上回るひねくれぶりを見せつつも、人付き合いが苦手で憎めないところがある。

その他にも、バレンタインデーの話では、今まで強さのみが強調されがちだった河原が、乙女な一面を見せるなど、笑えてかつ魅力的な話が多い。ちなみに、新キャラ登場ラッシュの中、ヒロインのはずの浅井の存在感がやや薄れがち。反対に、影響力を増していくのが上原。今後の展開はいかに・・・


★過去の記事★
『勤しめ!仁岡先生(1)』
浪漫倶楽部 天野こずえ エニックス 全6巻
浪漫倶楽部 <新装版> 天野こずえ マッグガーデン 全6巻


夢ヶ丘中学校に入学した火鳥泉行は、人間が目にすることができない精霊などを見ることができる、セカンド・サイト(第2の瞳)を持っていた。その能力を認められ、先輩の綾小路宇土が部長を務める部活、浪漫倶楽部に入部する。夢ヶ丘中学校の近くにある丘は、霊的な力を持っていて、かつてはそこで怪事件が起こっていた。しかし、100年前に祈祷師が頂上にある石に対して術をかけ、丘の力を封じて以来は、怪事件は人々の噂の域を出なくなった。しかし、噂の真相を確かめようとして綾小路が始めたのが、不思議な事件の解決を引き受ける謎の部活だった。ある日、化学部からの依頼を解決しようとして丘に行った火鳥は、小さな子どもを見つける。実は、その子どもは、100年前から丘を守る石の精霊であった。「楽しい」という感情を知ってしまった石の精が、火鳥らと共に過ごすことを選んだだめ、今まで封印されていた丘の力が解放され、周辺で不思議な事件が起こることになる。以来、浪漫倶楽部は不思議事件に巻き込まれ、それを解決する日々を過ごすことになる。

一話完結型の構成で、誰もが一度は夢見るような、不思議な事件や冒険が存分に描かれていて、少年漫画の王道とも言える内容になっている。だからといって、浪漫倶楽部の面々に特殊能力があるわけではない。火鳥の瞳も、誰かの声を聞くためのものでしかない。彼らは暴力に頼らず、事件の解決を目指す。それでいて、人間、動植物、物に対する思いやりの大切さ、共に過ごす仲間の大切さを訴える話もあるという、教育的な面も持った、文句の付けようのない少年漫画である。また、「MOTHER」シリーズの土星さんが密かに部屋に飾られていたり、火鳥家の面々の名前が、泉行(せんこう)、姉の真斗(まと)、父の力人(りきと)と、「蚊取り○○」に当てはまるようになっているなど、ギャグの要素もある。

特筆すべきは、主人公達の、弱者に対する優しさである。そもそも、不思議事件が起こるのは、強い想いを持った何者(物)かが、想いを叶えるために丘の霊力を借りようとするからである。不思議事件は、非力なものの魂の叫びと言い換えることもできるのだ。その事件を解決するということは、弱いものの声に耳を傾けることに他ならない。浪漫倶楽部のメンバーは、必ずや助けに応じてくれる。

もうひとつ、考えさせられるのが、人を受け入れていくことの大切さである。主人公達は、人をすぐに悪い人と決め付けたりしない、広い心を持っている。彼らの思いやりのお陰で救われる人物は多い。特に、本作には自分の思いをうまく伝えることが苦手な人物や、周囲と自分の違いに悩みを持った者が多数登場する。そもそも、部長の綾小路は学校一の変人と称される人物である。彼らは、「コミュニケーション能力」「空気を読む」という言葉が跋扈する現代において、どれだけの人に受け入れられることができるのだろうか。

そう考えると、この漫画から学べることは本当に多い。コミュニケーション能力を磨けということを謳った書籍は、世に溢れるほど出ている。しかし、他人の声に耳を傾け、受け入れていくことの大切さについてストレートに主張する言葉が、どれほど世の中に流通しているだろうか。その意味で、本作の存在は、発売から10年以上経過した現在においても貴重なものであろう。
此花亭奇譚 天乃咲哉 一迅社 既刊1巻



人間に育てられた狐の物の怪、柚は、物の怪たちが暮らす町にある宿、此花亭で仲居として働くことになる。柚の指導係に就いた皐を始めとした他の5人の仲居や、宿を訪れた客との間で繰り広げられる物語。

主人公、柚の無邪気な性格に人々が翻弄されつつも、大切なことを教わっていく物語。全体的に流れる和風の雰囲気や、温泉のサービスショットは、作者の初期の作品『現神姫』を彷彿とさせる。ただし、殺伐としたシーンは一切なく、ゆったりとした時間の流れとほのぼのとしたストーリーが特徴。少し萌えが意識された『ARIA』と表現すれば良いのだろうか。忙しさに溺れてうっかりすると見失ってしまいがちな季節の変化、不器用でも精一杯お客のことを考えて働くことの大切さ、普段は心を閉ざした人が心を開くことの感動などなど、物語は優しさに満ちている。

百合要素は露骨には出ていないので、それほど読者を選ばない内容であろう。
カバーを外すと、おまけ漫画あり。

公式HP
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