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自分が読んだ漫画の記録です。昔読んだものから最近のものまで、少しずつ揃えるつもりです。 コメント、トラックバック、お気軽にどうぞ。
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VANILLA FICTION 大須賀めぐみ 小学館 既刊1巻



佐藤忍は、若手の人気作家。世界の破滅を救うために殺人を依頼する手紙を受け取った主人公が、殺人を犯していくストーリーの『虫くい』という作品で注目を浴びる。しかし、彼の人生は「太宰治」と名乗る青年と、謎の少女エリと出会うことにより、大きく変わる。太宰は、佐藤に対して、エリの保護者となり、世界の破滅を救うように依頼する。不死身で、世界の行く末を何もかも知っているかのように話す太宰。佐藤は、太宰の指令に従い、ある島の岬でエリとクッキーを食べるという、妙な目標を目指した逃避行を始める。

帯には、「1ページ先で何が起きるか、予想も出来ない」という煽り文が書かれている。それもあながち嘘ではないと思える作品である。佐藤の小説『虫くい』の映画版予告編で始まり、読者をはっとさせる衝撃的な冒頭、何でもない日常から、いつの間にか主人公が迷い込む殺人現場、突如訪れた太宰の死… 1度乗ってしまったら、もう降りられず、なおかつ一寸先の進路さえ到底予想のつかない展開は、まるでディズニーランドのスペースマウンテンのような物語と表現すれば良いだろうか。もちろん、おとぎの国要素は一切排除されているが。

ファンタジックな雰囲気を醸し出す表紙からはまるで想像できない、人間の心の暗部を描いている点も、本作の特徴。事故から太宰を殺してしまった佐藤が、遺体を隠蔽し、人を殺めた苦しみに苛まれる場面などが一例だ。

主人公2人の旅は、今まさに始まったばかり。佐藤の生きる現実が、まるで自ら書いた小説の筋と重なっていくように変化した。佐藤とエリの2人に待ち受けている結末とは一体…
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神のみぞ知るセカイ 若木民喜 小学館 既刊20巻



今年、本作は5冊の単行本を世に送り出した。17巻と18巻では2冊同時刊行を実現するなど、作者は精力的な執筆活動を続けてきた。メインは女神探しである。かつて攻略したヒロイン達の傍に潜む、旧地獄の勢力、ヴィンテージ。その手からヒロインを守るべく、桂馬の攻略が再開される。

合計6人の女神探しは、いよいよ大詰めを迎える。これまでは鳴りを潜めていた旧地獄の勢力も本格的に動き出し、エルシィ、ハクア、ノーラとの戦いも熾烈を極める。桂馬は、月夜、栞、結の攻略を急ぎ、女神の助けを得ようと奮闘する。かつての攻略ヒロインが出てきて、懐かしい気持ちになった。

女神探しの終盤は、歩、ちひろ、桂馬の駆け引きがメイン。これまで攻略対象に過ぎなかったヒロインが、これでもかと自分の役割に抗う姿勢を貫く。あくまでもゲームの理論を貫徹し、旧地獄の悪魔の進出を食い止めることを最優先してきた桂馬だったが、現実の人間と関わることで、心を動かされた。ちひろを本気にさせてしまっていたことに気付き、リアルの難しさを知ると同時に、ちひろを巻き込んでしまったことに対して、後悔してもしきれない思いに駆られる。

6人の女神が結集し、旧地獄の勢力を一掃することができ、女神探しの物語は終結を迎える。まるで作品の終幕のような場面であったが、旧地獄の勢力は、まだ蔓延っていた。完全に征伐されたかのように見えた敵の親玉は、まだ生き残っているようだ。女神に導かれ、桂馬は10年前に戻る。物語はここにて、生きる気力を失くした少女を救うという新章に突入する。もしかしたら、これが最終章かと思わせるような展開に注目したい。


☆過去の記事☆
『神のみぞ知るセカイ(1)~(6)』
『神のみぞ知るセカイ(7)』
『神のみぞ知るセカイ(8)』
『神のみぞ知るセカイ(9)』
『神のみぞ知るセカイ(10)』
『神のみぞ知るセカイ(11)~(15)』
電波教師 東毅 小学館 既刊4巻



鑑純一郎は、アニメ評価ブログを日々更新するオタクで、やりたいことしかできない病(通称YD病)の持ち主。しかし、実は、過去にはあの「どこでもドア」を作れることを示したことのある天才である。変わり果てた天才の姿に呆れた妹の純音は、兄に教師の道を紹介する。かくして教師としての道を歩み出した純一郎は、独自の教育を展開し、徐々に生徒の信頼を得ていくのだった。悩める生徒とオタク教師に化学反応が起きる。

2012年は、また新たなる魅力的なトンデモ教師を生んだ。普段はアニメ評価ブログでアクセスランキング1位を目指して奮闘し、学校でもオタクであることを隠さない。行動原理は自分にとって面白いかどうかでしかないし、大掛かりで突拍子もない行動ばかりをしている。しかし、最終的には見事に生徒が内面に抱える問題を克服しているのが彼のすごいところ。

しょうもない教師に見えることも多々あるが、それでも日々活き活きとしている鑑の姿は、本当に眩しい。技術に強く、クラス専用のオンラインゲームや、試験対策用のアプリまで開発してしまうが、それもすべては義務感からではなく面白いと思う気持ちから。また、試験対策用のアプリが批判された中で行った演説は、「自分の将来に必要な勉強に集中し、自由を手に入れろ」というメッセージを込めたもので、正直その言葉には痺れた。その他にも、生徒の心に染み渡っていく言葉の数々には、惹き付けられるものがある。

こんな教師ばかりでは学校が成り立たないだろうが、こんな教師が1人くらいならいて欲しいと思わずにはいられない。
神のみぞ知るセカイ 若木民喜 小学館 既刊15巻



今年、本作は4冊の単行本を世に出すことになった。11巻で檜編は完結し、女神探しの新章に突入したと言えるだろう。それに連動し、11巻以降の表紙は女性キャラになっている。

周囲の期待を重圧に感じ、心を痛めるヒロイン、檜の姿は作者の過去の姿に重なり、作者の中では最も重い攻略編になったという。自分を見失い、ほとんど人間の形を失ってしまう檜と、必死に心の穴を埋めようとする妹の楠と桂馬の姿が印象的であった。周囲の期待にこそ、自分の存在意義を見出せることもあろうが、重なる期待が重荷に感じられることもある。人間の生きる源泉とは何であろうか。

さて、物語はその後、かねてから話題になっていた女神探しに突入する。女神とは一体何者なのか、なぜこれまで桂馬が攻略したヒロインが、桂馬への好意を捨てられずにいるのかが、徐々に明らかになってくる。新地獄に対抗する旧地獄の復活を望む者の動きが本格化する中、桂馬は過去のヒロインを再び攻略し、ヒロインの中に隠れた女神の力を借りようと決意する。

かのんや栞といった、初期のヒロイン達も重要なキーパーソンとなり、前から読んできた読者にとっては 嬉しい展開かもしれない。また、桂馬とある意味最も近い理想を掲げていながらも、攻略編では案外あっさりとした扱われ方になっていた九条月夜も、今後は出番も増えることであろう。女神探しはこれまでのヒロイン攻略という要素に加え、謎解きの要素もある。当初からこのような展開が考えられていたのかは不明だが、これまでとは明らかに異なる展開に、続きが気になって単行本の発売を待ち焦がれていた。

アニメの勢いを失わぬまま、今後も息の長い連載作になって欲しいと思う。


☆過去の記事☆
『神のみぞ知るセカイ(1)~(6)』
『神のみぞ知るセカイ(7)』
『神のみぞ知るセカイ(8)』
『神のみぞ知るセカイ(9)』
『神のみぞ知るセカイ(10)』
ちいさいひと 青葉児童相談所物語 夾竹桃ジン シナリオ/水野光博・取材、企画協力/小宮純一 小学館 第1巻



駆け出し児童福祉司の相川健太とその同僚が児童虐待の現場に立ち向かい、奮闘する物語。少年サンデーでのシリーズ連載開始以来、新聞でも取り上げられるなど、大きな反響を呼んだ作品が単行本化した。

約1年前に連載を開始し、自分自身も気にしていた作品。今こうして単行本化に至ることができ、ほっとしている。第1巻に収録されているのは、育児放棄を扱ったエピソード①すべてと、身体的虐待を扱ったエピソード②の第1話。

虐待の現場が壮絶であるゆえに、事実を基にした物語を載せるようにしている。そして、各話の間には児童虐待に関する基礎知識を紹介する文章も設けられていて、作品を読んだ人が真剣に虐待について考えるきっかけを与えてくれる。少年誌では異例の連載であるが、いずれ親になる少年少女に読んで欲しいという願いを込めて、あえて少年サンデーでの連載に踏み切ったという。(詳しくは、朝日新聞2010年10月27日付の記事参照)

漫画という媒体は時に恐ろしい。文章で伝えるよりも物事を鮮明に伝えることができ、映像で伝えるよりも生々しい描写をすることができる。ゆえに、漫画だからこそ伝えられる虐待の現状があるのだ。育児放棄の末に、やせ細った子どもの姿、ごみが散乱したアパートの一室、親からの暴力を受けた子どもの姿、主人公の頭にフラッシュバックする、幼少期に暴力を受けた時の場面。これらが克明に描写されているので、読者は虐待の現場をまざまざと見せつけられることになる。本作は、漫画ならではの特徴を存分に発揮し、児童虐待の現状を訴え続ける。

エピソード①には、とりあえずのハッピーエンディングが用意されているが、エピソード①で気になるのは、父親の存在感がないことだ。シングルマザーはなぜ虐待に至ったのかの鍵を握るのは、彼女の夫であるはずだ。しかし、父親の姿が取り上げられることなく、母親の育児放棄だけがフォーカスされているのは、やや問題を一面化しているように思えてしまう。ラストには、母親と子どもが明るい未来へ向かっての第一歩を踏み出しているような明るい場面が用意されているが、これも母親さえ変わればという印象を与えかねない。もちろん、これ以上問題に踏み込むと複雑になってしまうという考え方もあろうが、虐待問題の原因を単純化しすぎないということも大切ではないだろうか。

少年誌を通して児童虐待の現状を描く本作の存在は、非常に貴重である。第2巻以降にも期待する。
魔法行商人ロマ 倉薗紀彦 小学館 全5巻



魔法使いの少女ロマとその家来ミィノが、人間の欲望(クレシャ)を求めて続けてきた旅は、ついに最終章を迎える。欲望を抱えた中高生に魔法具を渡して歩いた日々の先に待っているものとは。ロマの目的が今明かされる。

5冊目にして、最終巻となった本作。ロマがこれまで人間の欲望を集めてきた理由は、今は亡き妹の命を蘇らせるためであった。第21話「イヴィダの館」から早速、あと数人分の欲望を集めれば、ロマの願いが叶うという事実が判明する。終わりが確実に迫っていることを意識させる展開で、その後の4話は緊張感を伴うものだった。

今回収録された話の筋は、どちらかというと第1巻の頃を思い出すようなもの。際限のない欲望にまみれて自分を見失い、バッドエンドを迎える者、自らの強い意志で欲望と現実の間に活路を見出す者… 本作の原点に還ったような話が多かったように思う。

そして迎える最終話が、「カルマの輪」。ここで、すべての謎が明かされる。実は、ロマの妹、リマは自身の持つ特殊な力ゆえに、ある死者の復活を望む人々に利用され、魔法が暴走する下で命を落としたのだった。その妹を復活させるため、ロマは欲望を回収していた。つまり、人間の欲望を集めてきたロマ自身もまた、欲望に捕らわれながら長い旅を続けてきたのだった。そして、その旅の目標は、これまた人々の欲望のために犠牲となった肉親の復活である。欲望が欲望を生み続けるという連鎖を食い止めることはできるのか。本作が投げかける疑問は案外深い。

これまでは背景のように無表情を貫くことの多かったロマが、終盤で大きく表情を変える。自らの欲望に捕らわれながら、徐々に狂気じみていく表情、己の欲望を叶えるためにこれまでしてきたことを振り返り、涙する表情、そして、最後に見せる笑顔… 最終話におけるロマの心情と行動自体が、これまで本作で伝えられてきたことの集大成になっていて、よく練られた終わり方だと思った。欲望は、人間が生きるために必要な糧であり、それでいて、道を踏み外すきっかけにもなり得る。人間はきっと、欲望に溺れ、もがき、時に抗いながら、生を全うするのであろう。では、欲望とはどう付き合うべきなのか。答えは本作の随所に散りばめられている。

第1巻の発売からは1年半ほど。これまで読み続けてきて良かったなと言えるような秀作であったと思う。


★過去の記事★
『魔法行商人ロマ(1)』
『魔法行商人ロマ(2)』
『魔法行商人ロマ(3)』
『魔法行商人ロマ(4)』
幻影少年 万乗大智 小学館 全6巻



人の心にダイブする能力を持った少年、秋月サトワと、その下宿先で喫茶店を営む少女、小川水音が営む探偵社には、他では解決できない悩みや秘密を抱えた依頼人が訪れる。サトワと依頼人との心の交流を描いた作品の6冊目にして最後の単行本。

5巻で前編が収録された「無償の愛」の後編と、サトワの過去を描いた「絆」の上・中・完結編が収録された最終巻。作者があとがきの部分で、描ききれなかったことがあるという心残りを述べているように、やや消化不良のまま終わってしまった感は否めない。

本作の課題は、対象の読者層をうまく絞り込めなかったことにあるのかもしれない。物語そのものとしては、人の心を扱った教訓的な要素もある内容で、少年漫画としては悪くない。しかし、物語の中には裏社会の人間も多く出てくるため、少年漫画としては若干ハードな部分があることも確かだ。私個人の意見としては、そこが本作の魅力の一部となっていると考えているのだが、一方でこのハードな部分が対象読者を絞ってしまった可能性はある。

個人の心の深奥には、その人の生き様や価値観、善意悪意のすべてが詰まっている。また、そこでは善と悪といった単純な二分法は成立しない。卑劣な犯罪者の心の中を微かに照らす善意の炎、誠実な人間の中に潜む他人を憎む心など、人間は二面性を持っている。サトワは、心の闇に切り込んでいくことで、この二面性とも真摯に向き合う。悪い行い、卑劣な行為に対しては毅然とした態度で立ち向かう一方で、人間の温かい部分に対しては優しさをもって関わる。悪い行為を憎みこそすれ、善人と悪人という二項対立を前提とはしないサトワの姿勢は、現代社会に痛烈なメッセージを投げかけているのではないかと思ってしまう。

またいつか、どこかで、ミッドワールドの世界に触れることができる日を待つ。


◆過去の記事◆
『幻影少年(1)』
『幻影少年(2)(3)』
『幻影少年(4)』
『幻影少年(5)』
魔法行商人ロマ 倉薗紀彦 小学館 既刊4巻



魔法使い少女ロマと、家来のミィノは、人間の欲望(クレシャ)を対価に魔法具を無料で配る。特に大きな欲望を抱えた中高生達は、己の欲望に飲み込まれるか、それに打ち勝つか。

順調に巻数を増やしている本作は、4冊目の単行本を世に出すことになった。話数にしては、20話を迎えた。話の筋としては非常にシンプルながらも、若さゆえに生まれる欲望について考えさせられる珠玉の5話が収録されている。

「もう1人自分がいたら…」という、誰もが1度は願うような望みが叶ったら、どんなことが起こるか。そんな題材を扱ったのが、第16話「ゴズリットの葉針」。コピーに面倒なことを押し付け、楽しいことだけをしようとする本家本元に対して、コピーが反旗を翻すという展開は、特に物珍しいわけでもない。それでも、コピーを消すにはお互いが殺し合うしかないという隠された真実はダーク過ぎる。しかし、ラストは、その後増えてしまったコピー達が話し合いながら義務を分担し合うという、コミカルな描写に落とし込んであり、読後感はあまり重くない。

ツインテールでツンデレの小学生の女の子が、親戚のお兄ちゃんに振り向いて欲しいと思い、大人の姿を手に入れるのが、第17話「ペジュラの短剣」。ギャグ調で進んでいく物語のラスト、少女は大切な事実を知り、満足げな顔で魔法具を返す。少女の後姿を眺めるロマの優しい表情が印象に残る。

第18話「マクロデウスの遊戯盤」は、平凡な遊びに退屈した高校生達が、スリルを味わいたいという誘惑に駆られ、魔法具に手を出すという話。生身の人間がすごろくの中で起こっている出来事を実際に体験するという設定は、映画「ジュマンジ」と似たモチーフである。続々仲間を失った先に行き着く結末は、読んでのお楽しみ。

「悔いのない高校時代を送りたい」という非常にまっとうな願いも、独りよがりのものになってしまってはいけないという教訓に満ちた話であるのが、第19話「メルドランドの闇晶石」。意思を操る石という密かな駄洒落もポイント。

第20話「ダヴァランの彩具」は、時間がたっぷりあればなという女子高生の願いを叶えるところが始まり。ところが、彼女の願いの裏には、本人も気付かないもっと別の欲求があった。自分にとって大切なものに気付かされ、一歩踏み出す勇気を得た主人公の姿が清々しい。

初期の頃と比べると、実に結末がバラエティに富んできて、面白くなっているなと思っているうちに、何と連載の方は間もなく最終回を迎えるとのこと。おそらく次の巻が最終巻となるだろう。最後まで見守っていきたい。

★過去の記事★
『魔法行商人ロマ(1)』
『魔法行商人ロマ(2)』
『魔法行商人ロマ(3)』


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未曾有の大震災は、津波、放射能漏れと、我が国に様々な影響を及ぼすこととなりました。また、被災者の方々の生活は、未だに厳しい状態にあると言わざるを得ません。管理人の家が東京電力から電力の供給を受けていることもあり、少しでも自分にできることをと思い、節電に努めるべく休止していた本ブログは、本日をもって再開いたします。計画停電が行われている時間帯や、電力の使用がピークを迎えるといわれる時間帯を避け、少しずつ発信していけたらと思います。今後とも、よろしくお願いします。
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銀塩少年 後藤隼平 小学館 全4巻



互いのことを想うがゆえに、離れていく2人。ミライは、幸田と付き合うという道を選択し、マタタキは写真賞入賞後、ミライへの想いを伝え、スペインへ渡る。しかし、未来をうつす写真について知ったミライは、マタタキを追ってスペインへ。そして、写真について何かを知る幸田が取った行動とは。未来写真をめぐる物語が、ついに完結する。

1人の人を思い続けるという純粋な心を持った一面と、写真にかける情熱の2つを持った、ちょっと弱気な主人公を呈したジュブナイルの決定版。最後の最後まで、このスタイルは崩さなかったように思う。それこそ、「必ず最後に愛は勝つ~♪」なんて歌がバックに流れそうな、純情な物語だった。

高校生のマタタキにとっての、年上で強力な恋敵になる幸田は、終盤でかなり悪者扱いされてしまっていた。主人公のマタタキが持つ、純粋に人を想う心を対比によって際立たせるには、その展開もありかとは思う。しかし、それでは幸田の気持ちは純粋ではなかったのかというと、そんなことはないはずだ。幸田もまた、ミライのことを好いていた。また、幸田から見たマタタキという存在は、きっと強力なライバルだったのであろう。だからこそ、ミライの気持ちを利用して、自分に有利な選択を迫ってしまった。この辺りの幸田の心情も描くと、物語に深みが増したようにも思うが、主題はぼやけてしまう。本作は、主人公に寄り添う純情路線を選択した。

写真は、現実の一瞬を切り取って表現することに優れている。それと同時に、写真には限界がある。写真はレンズを通した光の情報をありのままに表現するだけである。人間の認知はそれとは異なる。人間は目から入った情報を取捨選択し、脚色も行う。いわば、人間は見たいものを見るとも言えるのだ。もしも、ありのままを提示するに過ぎないはずの写真に、人間の強い思いが反映されることがあるとしたら、それはどのようにして可能になるのか。本作を読んでいると、そんなワクワクするような問いに思いを馳せることができる。

物語のラストで、「うつりゆく一瞬には永遠の輝きがひそんでいる」という言葉が出てくるように、時に切り取られた一瞬が、かえって動画では表現しきれない永遠を表現することがある。本作には、瞬間の煌めきを表現する写真の魅力が存分に詰まっている。


◎過去の記事◎
『銀塩少年(1)(2)』
幻影少年 万乗大智 小学館 既刊5巻



人の心にダイブする能力を持った少年、秋月サトワ、その下宿先で喫茶店を営む少女、小川水音と、探偵社を訪れる依頼人との心の交流を描いた物語。5冊目の単行本。

書き出しが印象的な4話が収録されている。サトワと水音のもとに引き取られた犬、マックスの語りで始まる「強い男」、トップレベルの機密事項の匂いを醸し出す「最後の願い」、不思議な事件に怯える大学生の姿が少しコミカルな印象を与える「十七階段」、衝撃的な事件を予感させる「無償の愛〔前編〕」。特に、前半の2話は、運命の残酷さと生きることの素晴らしさの両方を描いた、重みを持った作品。

本作を読むと常に感じるのが、人間の心の美しい部分と醜い部分の対照だ。皮肉なことに、美しいものがあるからこそ、醜悪なものが際立ち、目を背けたくなるようなものがあるからこそ、綺麗なものに感動できる。サトワがダイブする心の中は、輝けんばかりのきらめきに満ちていることもあれば、グロテスクな世界のこともある。美しい心は、醜い心があってこそ成立し得るのか。そのような問いを投げかけたくなる。

作者のあとがきによると、本作は次の6巻で終了の予定だそう。非常に地味な作品ではあるが、最後まで応援していきたい。


◇過去の記事◇
『幻影少年(1)』
『幻影少年(2)(3)』
『幻影少年(4)』
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