シューピアリア・クロス ichtys スクウェア・エニックス 既刊4巻
王子の下で働く科学者レネの弟、クリスは、城をモンスターから守る防御装置を無力化する装置を発明していた。レネとともにモンスターの巣窟となっている村を訪ね、クリスを探し出そうとする一行。レネ・クリスの兄弟が、互いのわだかまりを解き、さらに強力な防御装置を開発しようと手を組んだものの、時既に遅し。モンスター側に加担していたクリスの背信行為がばれて、クリスは殺される。悲しみに暮れるのも束の間、一同は王子の命により、魔王討伐のためエクサの故郷へ向かうことになる。3巻までのシリアスな展開から一変し、桃太郎のパロディによるギャグ調の話から入りつつも、徐々に物語の核心へと迫っていくことになる、緊迫の第4巻。
シーラへの疑いと信頼という相反する感情がエクサの中で最高潮に達した時、ついにシーラは自身の素性を明かす。シーラは何もかも包み隠さず話した。自分はかつて魔王として罪を犯したこと、実は魔王のコピーが存在すること、勇者や仲間と旅を続けるうちに壊したくない関係を築けたこと。しかし、エクサの今までの気持ちは一気に崩れ去った。自分の父母を殺め、村を破壊した魔王を倒さなければならないという使命に目覚めたエクサの表情は、ただ1点だけを見つめていた。
どんなモンスターも殺さないとしつつ、魔王のみを倒すという矛盾した信念を抱えてきたエクサだったが、魔王とわかったシーラには迷うことなく立ち向かった。今まで刻一刻と迫っていた、決断の時、真実が告げられる時がついに訪れた。やはり暴力に対しては暴力しか対抗すべき手段がないのだろうか。
一方、シーラは育ての親であるモンスターのカガミから、自らは魔王の血筋を持ったものであると明かされる。血縁という抗えない運命の重みが、新たに彼女にのしかかる。血縁の呪縛に対して自分なりの答えを見出すことができたアンジェリカや、レネ・クリス兄弟のエピソードがあった後だけに、ますます悲劇的な事実として、それはシーラの心に影を落とすことになろう。また、シーラはカガミから、魔王として生きる気がないならば必要ないと宣言されてしまい、また1つ悲しみを負う。
残虐で、強大な力を持った魔王の暴力性はどこから来るのだろうか。魔王のコピーが内面に持つ悲痛な想いからしても、他人から認めてもらえない苦しみ、他人を信じられない苦しみこそが、悪の根源なのかもしれない。
◆過去の記事◆
『シューピアリア・クロス(1)』『シューピアリア・クロス(2)(3)』