ヤンキー君とメガネちゃん 吉河美希 講談社 既刊21巻
冬期講習も終了し、いよいよ受験勉強も追い込みの時期を迎えた。冬期講習で神戸太陽に出会ったことから、品川は勉強への向き合い方を変え、受験生として大きく前進することになった。そんなこんなで受験一色に染まるかと予想されたクリスマスと年末年始、品川は相変わらず他人の問題に巻き込まれ、断ることのできないお人好しの性格を発揮するのだった。姉の海里と元生徒会長である秋田とのこと、母親の帰宅、揚羽工業の四天王達の留年問題など、品川の周囲には事件が絶えない。もちろん、今回の表紙を飾る青筋学園のメンバーも登場する。
受験や進路、勉強が大きな割合を占めた20巻に対して、21巻はその裏で起こる様々なエピソードを取り上げる巻となった。前半の多くの部分を割いて描かれる、品川姉弟に秋田を加えたエピソードは、姉と弟の絶妙な距離感を持った関係を浮き彫りにする秀逸なエピソード。ほろっとさせる展開を見せながら、最後のところで落とす描き方もうまい。
そして、これまで品川の家族で唯一登場することのなかった、品川の母親がいよいよ現れる。国際弁護士ながら、まったくの普通の主婦のような行動を見せる母親は、アウトローな超有名外科医の父親と好対照を成している。息子を思う母親の行動を、度が過ぎたおせっかいとして煙たがっていた品川が、ふと母親の優しさに触れて考えを改める場面は、心温まる場面。
その他、現在の生徒会を運営する香川・北見らのエピソードも掲載されている。とんでもない問題児、川崎兄弟との格闘、北見の家で開催されたクリスマスパーティーなど、受験勉強に励む品川達の裏で起こっていた出来事に、少し前までの本作の雰囲気を思い起こして、懐かしさを感じた読者もいるのではないだろうか。北見の妹、まゆも登場するという演出もにくい。
ちなみに、カバーを外したところに現れるスペシャルゲストの漫画は、個人的には今回が最もツボだった。なるほど、こんな見方もあるなと思ってしまった。
■過去の記事■
『ヤンキー君とメガネちゃん(1)~(4)』『ヤンキー君とメガネちゃん(5)~(8)』『ヤンキー君とメガネちゃん(9)~(12)』『ヤンキー君とメガネちゃん(13)~(16)』『ヤンキー君とメガネちゃん(17)(18)』『ヤンキー君とメガネちゃん(19)』『ヤンキー君とメガネちゃん(20)』PR