そんな未来はウソである 桜場コハル 講談社 既刊1巻
佐藤アカネは、他人が嘘をつくと、すぐにわかってしまう。大橋ミツキは、他人と目が合うと、その人の未来が見えてしまう。ある日、ミツキがアカネの未来をずばり予想したのをきっかけに、2人はたまに話す関係になる。アカネが見せた鏡に映った自分と目が合い、偶然にもミツキは自分の未来を知ることになる。その未来とは、同じクラスの高山君とミツキが結婚するというものだった。当事者が未来を知らされると、その未来が変わってしまうかもしれないという説明を聞き、多少の責任を感じたアカネは、ミツキと高山君を近づけるため、策を講じることを決意する。しかし、当の高山君は、ミツキのことが気になっているのに、一歩を踏み出せない。そして、クラスの他の女子が高山君を狙いだして、状況は複雑に。人との関わりを最小限に抑えたいという切実な気持ちから行動を始めたのに、むしろどんどん人を惹きつけ、自分のペースを乱されていくアカネ。突如運命の人を意識せざるを得なくなってしまったミツキ。2人の運命はいかに。
他人が嘘を言っていることがすぐにわかる少女、他人の未来が見えてしまう少女に、自分を好きになった人が必ず災難に遭うという少女。本作には、不思議な特徴を持った少女が結集する。そんな特殊事情を抱えた人が相互作用をしたら、一体どんなことが起こるのか。本作は、そのような疑問に対する一種の思考実験だ。
本作の魅力の1つが、大真面目に発せられる大ボケ発言。帯にもある、「結婚を前提に付き合ってください 大橋ミツキと」(佐藤アカネの台詞)、「アカネちゃん 私に「男の人をトリコにする方法」を教えて下さい」(大橋ミツキの台詞)など、思わずギョッとしてしまうような台詞を、登場人物達は大真面目な顔で発する。このような発言が文脈の中に収められることで、思わず吹き出してしまうようなシーンが作られていくのだ。
この「大真面目」という部分が、本作に笑いを生む鍵になっている。例えば、アカネが2人の仲を進展させようとしておかしな脚本を作る話では、脚本のアカネ、台本を忠実に演じようとするミツキと高山と、3人はいたって真面目。誰も奇をてらったわけでもないのに、ぎこちないやり取りの男女の会話は、結果的にコメディとなってしまう。
背景の少ない非常にシンプルな作画、1話当たり10ページという短い構成には、時に物足りなさを感じることもある。淡々と進んでいくページ・コマが特徴の作品。
◎2月が個人的に忙しく、約1か月振りの記事となってしまいました。1月の末から2月にかけて発売した単行本の記事も、追ってアップしていく予定です。