VIVO! 瀬川藤子 マッグガーデン 既刊2巻
自分主義の教師、仲村渠豊寛、通称ナカムラと、彼が部活の顧問を逃げるために始めた架空物具現化同好会に集まった生徒達の物語の単行本第2巻。ナカムラに教師の職を紹介した張本人である女教師、井崎と、ナカムラのパシリ的存在の東本にナカムラを入れた3人の過去について触れる話と、バレー部を辞めて同好会入りを志願する蒔田の話、同好会のメンバーで元不登校の住吉の話、さらに、作者のデビュー作である「ラブイズブラインド」を収録。
主人公が熱血教師に釘を刺した第1話、その後の同好会設立に至る経緯、生徒集めなどが主な内容だった第1巻に比べ、2巻の内容は意外にも仲間との絆を意識させるような内容だった。ナカムラに対して強く出ることができる数少ない存在である井崎の昔話は、人に受け止めてもらうことの大切さを意識させるものであった。旧家の出身ゆえに、家の方針に付いていけず、家出をするに至った井崎はナカムラの祖父と出会い、なんだかんだでナカムラ家に世話になることになる。「このおじいさんあっての孫」と言いたくなるようなナカムラ祖父の設定には、思わず感心してしまった。
第8話と9話にまたがる「フレンズ」は、クラスの女子との関係で絶体絶命のピンチを迎えた住吉を、同好会のメンバーが協力して助ける話。それぞれがぞれぞれの個性をうまく使いながら、住吉を救う、微笑ましくも心温まる話だ。
このように、人と人とのつながりを意識させるような内容が多いのが、2巻ではあるが、それでも全体に流れる、他人を気にしているようで気にしていない、他人を気にしていないようで気にしている雰囲気が何とも心地良い。確かに、同好会の新メンバー、蒔田のように真正面からぶつかるタイプの人物もいるが、他人に迷惑を掛けられることがいかに面倒くさいかを理解している部員達は、誰もが他人の領域に踏み込み過ぎない行動をすることができる。主人公、井崎、東本の3人の昔話を語る東本も、3人の関係を友情かと問われると、友情ほどは熱くない、ただの腐れ縁であると言い放つ。
人間関係が複雑化していると言われる現代においては、ともすると、人付き合いの波に晒されることと、自分にとって大事なつながりを得ることはトレードオフの関係にあると思えてしまう。お互い楽な関係でありながらも、しっかりと心の支えにもなれるという理想的な人間関係を築いている彼らの姿を見ていると、羨ましくなってしまう。
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