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自分が読んだ漫画の記録です。昔読んだものから最近のものまで、少しずつ揃えるつもりです。 コメント、トラックバック、お気軽にどうぞ。
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男子高校生の日常 山内泰延 スクウェア・エニックス 既刊5巻



恐ろしいことを考えたものである。それなりに人気を博している女子高生のゆるい日常を描いた漫画に対抗するかのように、男子高校生のどうでもいい日常の1コマを描いたら、どんな漫画ができるのだろうか。その考えを現実化したのが本作である。男子校を舞台にしているから、日常的に女子が出ることはない。女子が出てくるにしても、顔が明らかにされていない人が多過ぎる。このような、萌えとは無縁とも言える作品が、ガンガンONLINEで徐々に支持層を拡大し、アニメ化まで決定した。

本作の面白さは、一言で表現すれば「無駄」である。無駄に大掛かりな設定で缶蹴りをしたり、生徒会のメンバーが無駄に恐ろしい形相をしていたり、学内のちょっとしたいざこざなのに無駄に派手な勝負を演出したり。こういった1つ1つの無駄が、ちょうど悪乗りさせたらどこまでも突っ走りそうな男子高校生のイメージと相俟って、絶妙な面白さを生んでいる。

そこには、思わず「あるある」と言いたくなるようなネタはほとんど存在しない。むしろ、彼らは凡人が決してしないような域で日常を生きようとする。そう、本作は「日常」という名の下に非日常空間を描いた作品なのだ。

本作は終始男子校的なノリを貫く。その中ではヒロインとして崇められるべき対象の女子高生こそが、もはや変わり者や変人として扱われてしまう始末。それが端的に表れているのが、各巻に特別読みきりで収録されている「女子高生は異常」であろう。ここで描かれる女子高生は、誰もが変わり者で、ちょっとイタい人達である。このような描き方は、ある意味男尊女卑的であるので、読む人を選ぶ部分はあるかもしれない。

シュールなギャグと非日常的な日常が織り交ざった独特な雰囲気に関心があれば、是非とも一読を勧めたい。
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神のみぞ知るセカイ 若木民喜 小学館 既刊15巻



今年、本作は4冊の単行本を世に出すことになった。11巻で檜編は完結し、女神探しの新章に突入したと言えるだろう。それに連動し、11巻以降の表紙は女性キャラになっている。

周囲の期待を重圧に感じ、心を痛めるヒロイン、檜の姿は作者の過去の姿に重なり、作者の中では最も重い攻略編になったという。自分を見失い、ほとんど人間の形を失ってしまう檜と、必死に心の穴を埋めようとする妹の楠と桂馬の姿が印象的であった。周囲の期待にこそ、自分の存在意義を見出せることもあろうが、重なる期待が重荷に感じられることもある。人間の生きる源泉とは何であろうか。

さて、物語はその後、かねてから話題になっていた女神探しに突入する。女神とは一体何者なのか、なぜこれまで桂馬が攻略したヒロインが、桂馬への好意を捨てられずにいるのかが、徐々に明らかになってくる。新地獄に対抗する旧地獄の復活を望む者の動きが本格化する中、桂馬は過去のヒロインを再び攻略し、ヒロインの中に隠れた女神の力を借りようと決意する。

かのんや栞といった、初期のヒロイン達も重要なキーパーソンとなり、前から読んできた読者にとっては 嬉しい展開かもしれない。また、桂馬とある意味最も近い理想を掲げていながらも、攻略編では案外あっさりとした扱われ方になっていた九条月夜も、今後は出番も増えることであろう。女神探しはこれまでのヒロイン攻略という要素に加え、謎解きの要素もある。当初からこのような展開が考えられていたのかは不明だが、これまでとは明らかに異なる展開に、続きが気になって単行本の発売を待ち焦がれていた。

アニメの勢いを失わぬまま、今後も息の長い連載作になって欲しいと思う。


☆過去の記事☆
『神のみぞ知るセカイ(1)~(6)』
『神のみぞ知るセカイ(7)』
『神のみぞ知るセカイ(8)』
『神のみぞ知るセカイ(9)』
『神のみぞ知るセカイ(10)』
VIVO! 瀬川藤子 マッグガーデン 既刊1巻



知り合いの紹介で突如高校3年生の担任として赴任することとなった30代の男、仲村渠豊寛、通称ナカムラ。自分主義の彼は、教育の場でもそれを貫こうとする。あまりの超放任主義の教育を実践する担任に対して、クラスの生徒達は動揺を隠せない。しかし、そんなナカムラ流の教育に、振り回されつつも徐々に引き込まれていく生徒がいた。自分本位の先生と個性的な生徒達の交流記。

自分主義のトンデモ教師の価値をしかと認識させられるのが、第1話のエピソードである。そう、この漫画は第1話からしてナカムラ節全開なのである。最初から勢いがあるため、その先の話にもぐいぐいと引っ張られてしまう。「熱血教師=善」という図式を当然のごとく標榜する担任に対し、ナカムラは、生徒がウンザリしているという現状をあっさりと、そして明確に伝える。たじろぐ担任に対して、「自己陶酔」という捨て台詞で追い討ちをかけるナカムラ。珠玉の第1話だ。

『ドラゴン桜』の桜木健二にしろ、『勤しめ!仁岡先生』の仁岡隆志にしろ、正統派の教師からしたらとんでもないような教師が、不思議と魅力的に映ることがある。本作の主人公のナカムラ先生も、その1人だ。自分が面倒くさいと思うことは避けるということを至上命題としつつ教育に当たる彼の姿は、一見どうしようもない人物に見えつつも、結果的に生徒の心を掴むことがある。おそらく、彼らに共通するのは、裏表のなさであろう。例えば、仁岡の子供嫌いは一貫しているし(本人は「全てのガキを等しく嫌ってます」発言したことがある)、本作のナカムラも、「俺に迷惑さえかけなければいい」という原理に従って行動する。それが結果的に生徒思いの行動になることもあれば、生徒が呆れてしまうような場合もあるのだ。しかし、何よりも「楽」であるのが、多くの生徒に共通する感想である。

加えて、本作のナカムラは仕事が完璧だ。例えば、不登校歴を持つ生徒の住吉結子については、校長に特別の許可を必要とする生徒という説明をしておくことで、彼女が授業に出なくても咎められないよう根回しをしておく。それでいて、住吉に対しては「自分で日数計算して上手いことやれよ」とだけ言い放つ。自分本位の行動とはいえ、見事な配慮である。他にも、バスケ部の顧問を任されないようにするために、生徒を半ば強引に自分の同好会に入部させる方法など、要領を得た仕事ぶりには感動すらしてしまう。

型に嵌らないはっちゃけ教師が支持されるということは、それだけ現代の教育が暗礁に乗り上げ、突破口を失った状態にあるのだろうか。せめてフィクションの世界だけでも、既存の欺瞞に満ちた教育の世界にメスを入れるトンデモ教師の行動に期待する。
るいるい 真楠 マッグガーデン 全2巻



羽山ほのかは、水沢柚姫と同じ部活に入るべく、景観歴史研究部、通称「廃墟部」に入部する。廃墟部ライフを始めたほのかには、個性の強いメンバーによる手痛い歓迎があった。身近な廃墟に文化祭のお化け屋敷、そして憧れの軍艦島と、廃墟部の面々は部活動を精一杯楽しむのだった。しかし、そんな廃墟部にも終わりが着々と近付いているのだった。個性派の登場人物達による廃墟コメディーの2冊目にして最後の単行本。

廃墟部の活動を堪能する主人公達と、その先に待ち受ける廃墟部の無期限活動停止というコントラストが見事な第2巻。楽しい活動も束の間。廃墟部は、部室の老朽化による安全性が問題となり、解散することになってしまう。

廃墟は、崩壊寸前だから廃墟たりえるのだ。ラストで述べられる、散り際の一瞬の美しさを愛でる言葉は、どんなものでも永遠に続くことはないというこの世の理を表しているようで、案外真面目な終わり方だったように思う。そして、主人公達はそれぞれの道を歩み始めるのだった。物事の終わりは新しい物事の始まりでもある。廃墟部の部員達は、今日もまた、変わらない日常の中に埋もれた有限の美を見つけようと奮闘するのであろう。


+過去の記事+
『るいるい(1)』
外つ神 斎藤岬 幻冬舎 既刊5巻



祖母の死をきっかけに、高校生の鳴神匡は、突如外つ神守としての役割を任される。同級生の野々宮千影、副担任の狐塚嵩臣、その従妹の咲、狐塚の友人のヴァンパイア・クォーターの百鬼冬麻らとともに、匡は悪霊が出てくる裂け目である外つ神塚を守ろうと奮闘する。全国に12あるという外つ神守達が、鳴神家に集い、鳴神家の塚を他の家に任せてはどうかという話まで出てくる中、匡は仲間の助けを借りつつ、何とか自らの家の塚の管理権を失わずに済む。自分の無力さを痛感した匡は、外つ神守の会合で出会った斎宮の惟子に、魔物退治の方法を学びたいと志願する。しかし、匡に嫉妬する御手洗の策略で、匡は黄泉の国に落ちてしまう。

順調に巻を重ねている妖怪退治漫画。身近な妖怪退治が多かった3巻までの流れからは一転して、徐々に主人公の過去が明らかになっていったり、外つ神守の駆け引きが描かれたりと、物語は外つ神守を中心に据えて動き出す。鳴神家の蔵にある謎の箱の存在も、この先重要な鍵を握るのだろうか。

また、匡が黄泉の国に行ってからは、匡が狐塚家の次男、史春に出会い、独特の感情を覚えるなど、匡の心の中に少しずつであるが変化が訪れる。

加えて、これまでクールに匡の援護をしてきた千影が、黄泉の国に行ってしまった匡のことを心配して、初めて匡への気持ちを露わにするところは名場面だ。実は両想いだよ、匡!

予想以上に息の長い作品になりそうな本作。巻末のおまけ漫画と壁紙プレゼントの企画は相変わらず継続中と、サービスも満点。


◆過去の記事◆
『外つ神(1)(2)(3)』
ローゼンメイデン PEACH-PIT 集英社 既刊6巻



"まいた"世界に訪れた束の間の休息は過ぎ去り、物語が動き始める。ついに学校へ通い始めるジュン、ジュンに興味を持つ少年、鳥海、謎の転校生としてジュンの学校にやってきた、水銀燈のマスターである柿崎めぐ。徐々に"まいた"世界の人間の歩みが重なる。一方、薔薇乙女達の間にも、様々な思いが交錯する。物語の進展を予感させる第6巻。

"まいた"世界の物語が本格化したのが第5巻であったが、大きな進展はなかった。しかし、第6巻では徐々に歯車が動き出す。特に、これまでの複線が回収されつつあるという点で、重要な巻になった。蒼星石がかつて「9秒前の白」で見たものとは? ジュン、水銀燈、柿崎めぐの三者の関係とは? 新たな謎が生まれる。そしてもちろん、すべての黒幕とも言える雪華綺晶の動向も気になるところ。

また、引きこもりから脱出し、学校へ通うジュンや、父親の影に儚い思いを寄せるめぐの描写も非常に充実しているのが、6巻の特徴だ。元から、引きこもりや難病といった課題を丁寧に取り上げてきた本作だけに、期待を裏切らない。ジュンが登校する途中の様子や、Extra Taleとして描かれる水銀燈とめぐのやり取りは、繊細でいて迫力のある描写だった。

次回でヤングジャンプ移籍後の単行本の数が、ドールの数と同じ7に達する。バーズ時代から数えると10年近くにもなる長期連載であるが、まだまだ謎が謎を呼ぶ状態。


◇過去の記事◇
『ローゼンメイデン (1)(2)(3)』
『ローゼンメイデン (4)』
『ローゼンメイデン (5)』
ちいさいひと 青葉児童相談所物語 夾竹桃ジン シナリオ/水野光博・取材、企画協力/小宮純一 小学館 第1巻



駆け出し児童福祉司の相川健太とその同僚が児童虐待の現場に立ち向かい、奮闘する物語。少年サンデーでのシリーズ連載開始以来、新聞でも取り上げられるなど、大きな反響を呼んだ作品が単行本化した。

約1年前に連載を開始し、自分自身も気にしていた作品。今こうして単行本化に至ることができ、ほっとしている。第1巻に収録されているのは、育児放棄を扱ったエピソード①すべてと、身体的虐待を扱ったエピソード②の第1話。

虐待の現場が壮絶であるゆえに、事実を基にした物語を載せるようにしている。そして、各話の間には児童虐待に関する基礎知識を紹介する文章も設けられていて、作品を読んだ人が真剣に虐待について考えるきっかけを与えてくれる。少年誌では異例の連載であるが、いずれ親になる少年少女に読んで欲しいという願いを込めて、あえて少年サンデーでの連載に踏み切ったという。(詳しくは、朝日新聞2010年10月27日付の記事参照)

漫画という媒体は時に恐ろしい。文章で伝えるよりも物事を鮮明に伝えることができ、映像で伝えるよりも生々しい描写をすることができる。ゆえに、漫画だからこそ伝えられる虐待の現状があるのだ。育児放棄の末に、やせ細った子どもの姿、ごみが散乱したアパートの一室、親からの暴力を受けた子どもの姿、主人公の頭にフラッシュバックする、幼少期に暴力を受けた時の場面。これらが克明に描写されているので、読者は虐待の現場をまざまざと見せつけられることになる。本作は、漫画ならではの特徴を存分に発揮し、児童虐待の現状を訴え続ける。

エピソード①には、とりあえずのハッピーエンディングが用意されているが、エピソード①で気になるのは、父親の存在感がないことだ。シングルマザーはなぜ虐待に至ったのかの鍵を握るのは、彼女の夫であるはずだ。しかし、父親の姿が取り上げられることなく、母親の育児放棄だけがフォーカスされているのは、やや問題を一面化しているように思えてしまう。ラストには、母親と子どもが明るい未来へ向かっての第一歩を踏み出しているような明るい場面が用意されているが、これも母親さえ変わればという印象を与えかねない。もちろん、これ以上問題に踏み込むと複雑になってしまうという考え方もあろうが、虐待問題の原因を単純化しすぎないということも大切ではないだろうか。

少年誌を通して児童虐待の現状を描く本作の存在は、非常に貴重である。第2巻以降にも期待する。
zen zen 槙ようこ×持田あき 集英社 既刊1巻



高校生、古瀬哲は交通事故で兄の直一を亡くしてしまう。兄が遺したのは、「古瀬学習塾」という塾だった。直一はイケメンであったゆえに、塾に集まっていたのは兄狙いの女子ばかりであった。兄の死を機に塾を閉鎖するつもりだった哲だったが、そこに集まる同年代の女子が内面に抱える問題や、兄が生徒に対していかに真剣に向き合っていたかを知り、自らの手で塾を存続させることを決意する。

ヘタレ高校生と、そこに集まる大勢の女子という、少年漫画の王道ラブコメストーリーのような設定を少女漫画に持ち込むとどうなるのかという点で、非常に興味深い作品である。今のところは、恋愛要素が入るというより、少女の内面に向き合おうとして真摯になる哲と、その姿に徐々に心を動かされていく少女たちという展開。意外と勉強に対しても真面目で、三角比を使って、今見ている花火がどれくらいの距離にあるのか測ろうとするエピソードなどもある。

何となく心にぽっかりと穴が開いたような気がして、居場所を求める気持ちを持っていたのは、何も少女達に限ったことではなかった。哲も同じだった。一見わがままで自分勝手な生徒と張り合う中で、時に哲自身も励まされ、希望をもらうこともある。教師と生徒という関係であっても、同年代ゆえに、哲は上から目線でものを言うことはない。ただひたすらに、自分の思いを不器用にぶつけ続けているのだが、その声が彼女達の心の叫びに応えられる瞬間があるのだ。

縦の関係ではない、横の関係でもない、斜めの関係こそが、現代社会で孤独を感じる若者にとって必要な関係なのかもしれないと思ってしまった。

さよなら絶望先生 久米田康治 講談社 既刊27巻



超ネガティブ教師の糸色望と、2のへ組の生徒が繰り広げるギャグ漫画はついに27巻へ突入。今回も、絶望先生は時に世の中に絶望し、時に世の中に鋭いツッコミを入れる。

時事ネタが随分と復活したという点で、非常に嬉しい。節電、原発問題、ランドセルを贈る伊達直人までネタにしてしまう勇気には感嘆してしまう。まるで、初期の頃に戻ったかのように、絶望先生独特の飛躍をもった発想がとことん発揮されていて、非常に痛快だった。

また、超展開の話も多く、それらのスパイスがよく効いていた。七夕の日に中学受験生の暗記カードが散ってしまい、短冊と入れ替わったため、歴史上の事件が現代の世に次々と起こってしまうという話が、その一例である。

実は、第二百六十八話は幻の掲載作になっていたのだと、単行本のおまけページで初めて知った。どうも『ドラえもん』の12巻に載っている、お金が要らないものである世界に行く話とネタが丸被りしたのだという。藤子プロからも単行本掲載の許可を得たそうだが、掲載自粛に至ったそうだ。そのため掲載ペースが乱れ、第二百七十一話までの掲載となっている。

次巻の発売は、来年の2月。今年最後の発売となった単行本は、十分に楽しめる内容だった。


□過去の記事□
『さよなら絶望先生(1)~(19)』
『さよなら絶望先生(20)』
『さよなら絶望先生(21)』
『さよなら絶望先生(22)』
『さよなら絶望先生(23)』
青春フォーゲット!  岬下部せすな 双葉社 既刊1巻



奈月太陽は、高校入学の初日、同じ学校に通う少女にひと目惚れし、勢いで告白する。しかも結果はOKであった。 しかし、その少女、日向こかげは「毎日楽しい思いをさせる」という条件を太陽に突きつける。なぜなら、彼女の記憶は、特別なことがない限り通常24時間経つとリセットされてしまうからであった。かくして、太陽が自らの存在を彼女の記憶に刻むために奮闘する日々が始まった。

いわゆる順向性健忘の症状を持った美少女とのラブコメ。熱さゆえにKYなところがある太陽と、クールで驚異的な身体能力を誇るこかげのやり取りは、コメディに相応しく、楽しく読み進められる。そもそも、表紙で主人公の顔が隠されてしまっている時点で、主人公の存在がすなわちギャグになり得ることがわかる(ちなみに、カバーを取ると、そのことについて太陽がツッコミを入れる絵を見ることができる)。

作者は『S線上のテナ』も手掛けた岬下部せすなということがあり、本作には『S線上のテナ』の登場人物を髣髴とさせる設定が多々ある。例えば、太陽が料理上手で完璧に家事をこなす姿は響恭介の姿と重なり、クールで人と関わることが苦手なこかげの性格はアルンを想起させる。

この話、ラブコメの裏には記憶障害に苦しむこかげの姿がある。彼女のクールで人を避ける行動は、相手との思い出を自分が忘れてしまい、人を傷付けることを避けるためのものだった。彼女に前向きに生きてほしいと願う太陽は、ひなたの心を開くことができるのか。

日向こかげという人物は、人に冷たい態度を取る一方で、他人の熱い言動に心打たれたり、かわいいものを愛でたりする二面性を持っている。今まで必死になって「木陰」の部分で生きてきた彼女が、「日なた」の面に目覚める過程が、この物語の大きなテーマになるであろう。そして、彼女が内に秘めた「日なた」としての面を発揮することで、人を照らす「太陽」の役割を担う主人公、奈月太陽自身も変化していくことであろう。彼の名前に隠された、誰かに照らされて輝く「月」という文字がそれを表している。
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