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自分が読んだ漫画の記録です。昔読んだものから最近のものまで、少しずつ揃えるつもりです。 コメント、トラックバック、お気軽にどうぞ。
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ひきょたん!! 久遠まこと 角川書店 既刊1巻



高校1年生の秋に境来学園に転校した東圭太は、同じクラスの女子生徒、七瀬未来、倉崎彩花、夏木香奈らに誘われて、秘境探検部に入部する。秘境探検部の活動は、身近にあるけれども誰も踏み込まない場所を探検すること。同級生の家、夜の学校、街中にある「黄金郷」… 未知の「秘境」が彼らを待ち受ける。

表紙を見て、驚く人も多いはず。完璧に『涼宮ハルヒの憂鬱』を意識した表紙。実際のキャラクターも、涼宮ハルヒそっくりの七瀬未来、長門有希のそっくりさんの夏木香奈、そして、キョンのような立場の東圭太。恐るべし。下手をすれば、単なる二番煎じ、パクリと酷評される可能性と常に向き合いながらの執筆は、作者にとってハラハラドキドキの大きな挑戦になるはずだ。作者自身、秘境探検部と同じく、未知の領域を貪欲に求めるという使命を背負っている。

一方、読者の楽しみは、作者のそのようなライン際のせめぎ合いを見守ることにある。同じタイミングで角川書店から『てんかぶ!』の1巻を出した井冬良の販促コメント、「『ひきょたん!!』を読む事、それがすでに秘境探検です!」は、言い得て妙。

現在の展開は、ギャグ路線に、お色気描写を添える形。身近に潜む謎を「秘境」と名付けて楽しむスタイルは、ばかばかしいと思いつつも、楽しめる。この先、どのようにして読者を飽きさせない工夫が見られるのかが鍵。七瀬未来のボケが中心のギャグと、女子の下着描写で進む物語に未来はあるのか。そして、『涼宮ハルヒの憂鬱』の登場人物、朝比奈みくるや古泉一樹のそっくりさんは現れるのか。秘境探検部、作者、読者の秘境探検は、まだまだ始まったばかり。
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こどものじかん 私屋カヲル 双葉社 既刊8巻



若手の新人教師、青木大介と、担任を務めるクラスのおませな小学生、九重りん、りんの友達の鏡黒、宇佐美々との交流を中心に描いた物語。5年生に進級したりんは、大介と距離を置くことを決意したが、大介の熱意に動かされ、一緒に生活する、母親の従兄弟、レイジとの関係を変えていこうと決意する。

大介は、持ち上がりで5年生のクラスを担当。5年生を迎えたからといって、とりわけ大きな事件が起こるわけではない。しかし、5年生ともなれば、生徒達は心身ともに大きく成長する。それゆえに出てくる様々な問題に対して、奮闘していくことになる。特に感心してしまったのが、初潮・精通教育を行う場面。かつて、この分野をこれほどコミカルかつ真面目に取り扱った漫画があるのだろうかと思うほど。

これまでが、回想を通して個々の人物の家庭環境を描くなど、問題の所在を明らかにすることが主だったのに対して、徐々に問題の解決へと物語が進みつつある。各々が、自らの抱える辛い問題に立ち向かおうと、動き始めた。りんは、母の死後、愛情に飢えて自己犠牲的な生き方をしてきた自分を見直し、母親の従兄弟、レイジとの関係を変化させようと、大介と協力するようになる。一方、レイジも自分を見つめ直す機会を得るようになる。レイジが過去ではなく、未来と向き合う勇気を持つ鍵となるのは、同じような家庭環境で育っている、りんの同級生、美々かもしれない。また、同じく幼い頃、抑圧的な両親の下、苦しんだ経験を持つ白井先生は、自分の生育過程を教育者の視点から客観的に見つめ直すことを通して、やがて自分を解放することに成功する。周りよりも一歩早く問題の解決に辿り着いた彼女は、今度は恋愛のことで悩むようになる。

大介への恋愛感情を深めつつも、アプローチが滑稽な結果に終わってしまう、同僚の宝院先生の奮闘や、最近大介に甘えるようになってきた黒の姿など、微笑ましい場面も多々ある。ほのかな感動を受ける場面が多い中、絶妙なコントラストだ。次巻は、来年の1月発売予定。楽しみな展開を気長に待つ。


※過去の記事※
『こどものじかん(1)(2)(3)』

『こどものじかん(4)(5)(6)』
Venus Versus Virus 鈴見敦 メディアワークス 全8巻



私立銀女学院の中等部に通う鷹花スミレは、他の人には見えない化け物が見える目を持っていた。ある日の学校帰りに化け物に襲われたところをルチアという少女に救われて以来、魔人(ヴァイアラス)退治に奔走することになる。やがて、ヴァイアラスを操っていた黒幕が明らかになるにつれて、戦いは激化する。敵の思惑を阻止し、世界を守るべく、彼女達は敵に立ち向かう。

戦う美少女とセカイ系という設定を基礎とした物語。正体のよくわからない敵と美少女が戦うというところや、戦いが世界の終末を防ぐという目的で行われる点は、典型的なセカイ系のストーリーだ。しかし、本作は巨大ロボが登場するわけでもなければ、恐ろしい兵器が使われるわけでもない。「新感覚ダークファンタジー」と銘打ち、ゴスロリも取り入れる辺りは、ファンタジーの要素が強い。

テーマとしても、他人を受け入れることの尊さなど、案外普遍的なものが扱われているので、決して読者を限定するような作品ではないと思う。現在の世界だって、捨てたもんじゃない。きっと、互いに受け入れ合える人と出会う可能性に満ちている。そのような温かいメッセージが物語の結末から感じられる。

絵は、特に萌えを意識したものではない。むしろ、綺麗な絵とリアルな絵の中間に当たるような雰囲気。トーンを多用せず、白と黒でシンプルに仕上げたコマも多く、光と影の部分が際立っている。人間の心の光と闇を扱う作品の世界観に似つかわしい。
ヤンキー君とメガネちゃん 吉河美希 講談社 既刊16巻



生徒会メンバーは、3年生に進級。進級早々、2年次に転校してきた生徒の暴力事件が起こり、相変わらず忙しい日々を過ごす。1学期最大の行事、体育祭に燃えた後は、いよいよ新しい生徒会の選挙となる。さらに、品川大地が、入試のときに見たあこがれの女子生徒のそっくりさんを隣の青筋学園で見かけることになり、品川の恋心に灯がともる。

夏休み前までの数ヶ月の間でも、本当に様々な出来事が目白押し。体育祭は、これぞ高校生の応援団と思えるような、1コマである。品川は、運動神経から見ると絶対的不利にある赤組の団長に就任し、朝練、昼練、夜練と練習を指揮する。団長を務めるうちに、品川の中にあったリーダーシップが徐々に目覚めていったり、不良として怖がられていた2年生の北見が思わぬダンスの才能を発揮したりといった、ドラマも描かれる。ひたむきに努力する彼らの姿を見て、彼らの通う紋白高校に憧れを抱く人は多いだろう。

生徒会選挙を巡る攻防の過程では、紋白高校の入試における「不良枠」という秘密が明かされる。何と、入試の一部に元不良で真面目に頑張りたいという意志を持った生徒を優先的に入学させる枠があったのだ。あまりに突飛な設定でありながらも、現実にそんな学校があれば面白いなと思ってしまう。北見のように、周囲から「不良」というレッテルを貼られ、強がってながらも、本当はクラスメイトと友達になりたいと素直に願っている者もいる。反対に、一見普通に見えても、心の内に問題を抱えた者だっている。そんな彼らが、人と人が関わることによる相互作用を受け、自分の居場所を見つけていく姿は、微笑ましく、頼もしい。

最後に、忘れていたかのような恋愛という側面も扱われる。きっかけは、紋白高校の生徒会が隣の青筋学園に訪問して、特別授業を行ったこと。品川にインタビューを求めてきた、青筋学園の生徒会書記、水戸すばるは、品川が紋白高校の入試のときに出会った憧れの人物と瓜二つ。結局人違いに終わるが、水戸は、品川へ恋心を抱くことになる。

高校3年生になってから、話のスピードはダウン。短い時間内にも色々な事件が起こる。主人公達の過ごす時間の密度が濃くなり、時間がゆっくりと流れるようになったと考えれば、不自然なことでもないかもしれない。


▽過去の記事▽
『ヤンキー君とメガネちゃん(1)~(4)』
『ヤンキー君とメガネちゃん(5)~(8)』
こどものじかん 私屋カヲル 双葉社 既刊7巻



新人教師、青木大介と、おませな小学生、九重りんとのやり取りを中心に、りんの友達の鏡黒、宇佐美々、大介の同僚の教師達を巻き込んでの物語。りん達は4年生に進級。

生徒同士、教師と生徒、教師同士の交流から生まれる相互作用がますますパワーアップしてきた。その中で、各々が自らに与えられた課題に果敢に立ち向かっていこうとする姿から、日々を生き抜く力をもらえるような気がする。

特に象徴的と言えるのが、大介の同僚の白井先生の心情の変化。教育など、自らの生計を立てる手段に過ぎないとする考えで教員生活を送ってきた彼女は、モンスターペアレントの対応を通して、ふと自分の親子関係を見直す機会を得る。そこから、これまで自分が受けてきた教育を教育者の視点から捉え直すという道を見出す。学校秀才として生きてきながら、その他の面では自分に足りない面があると認識し、自分の生き方を見直していく姿勢には、心打たれる。

大介とりんの関係にも変化が訪れる。大介は、自分のりんへの想いを父性のようなものだと捉え、恋愛感情を否定する。しかし、徐々にりんの家庭事情を知っていくにつれ、教師の立場ながら、家庭への介入も始める。りんは、自分の暗い内面を知っても、自分のことを見放さなかった大介への温かい想いに対し、心からの感謝を示しつつ、育ての親であるレイジの気持ちに応えたいと思い、大介との距離を置くことを決意する。

ロリコン漫画と形容さえながらも、教育問題の取り上げ方に非常に誠意を感じられるのが、本作の特徴。舞台となる双ツ橋小学校の教員は、皆真摯に日々の問題へと立ち向かっている。そこからは、教育現場への嘆きや批判ではなく、希望を見出せる。教師達は、単に「情熱」や「熱血」という言葉では括れない、しかし、心のこもった姿勢で、生徒と向き合っていく。時に不器用で、だけど、決して客観的な視点を見失わず、言動に注意を払いながら、問題と対峙する。誠心誠意が感じられる。

教師だけではない。教師以上に速いスピードで、子どもは成長する。りんや黒のように、育った環境ゆえに、早い時期から子どもとしての感情を捨てなければならなかった子ども。反対に、レイジや白井先生のように、成人しても、いつまでも内に潜んだ親の影を排除できずに苦しむ大人。この物語は、大人も子どもも関係なく、自らの苦しみ、悲しみ、課題を乗り越えていくことをテーマとした、人間ドラマとしての側面も持っている。


◎過去の記事◎
『こどものじかん (1) (2) (3)』
神のみぞ知るセカイ 若木民喜 小学館 既刊8巻



ギャルゲーの世界で「落とし神」の名をとどろかす高校生、桂木桂馬が、地獄から来たドジな悪魔、エルシィと共に、現実の女性攻略に奮闘する物語の第8弾。夏休みを迎えた桂馬は、田舎、街中と、普段とは少し異なったシチュエーションでの恋愛に臨む。

順調に巻を重ね、8巻に到達。アニメ化も決定ということで、今後知名度がさらに上昇するのではないかと思われる。

今回の攻略対象は、2人。桂木家の実家近くに住むお婆さん、日高梨枝子の若かりし頃の姿をした幽霊(?)、地味なラーメン屋を営む父と暮らす少女、上本スミレ。

日高梨枝子編は、人間が年老いていくこととはどういうことなのかを問いかける、これまでとは全く趣向の異なった話。今までの攻略対象だった少女は、心に隙間を抱えていても、それを埋めてもらうことで、再び前向きに生きていく勇気を得ていた。しかし、老人の場合は異なる。長生きするにつれ、徐々に自分の周りにいた大切な仲間達が姿を消していく。たった独りで生まれてきた人間が、また独りぼっちへと向かいつつある不安、悲しみは、そう簡単に収まるものではない。過去の人生を充実したものだったと振り返り、思い出を胸に穏やかに余生を過ごそうとする老人の姿を見て、主人公が逆に考えさせられる場面は見もの。

上本スミレ編では、本人だけでなく、父親の存在が外せない。父親は、自分のような人生を歩ませるのは、子どもにとって不幸なことだと思い、娘が店を手伝うのを反対する。娘の方は、何とか自分の大好きな店を父親と共に続けて生きたいと願い、新しいラーメンの開発に勤しむ。父娘の間に桂馬が入り、スミレとの恋愛要素は取り入れつつも、根底にあるのは親子愛だ。父は言う。
「親ってのは子供が自分と同じじゃ…
気が済まないんだよ…
自分が情けないほど……
子供が同じじゃ…
ダメなんだ!!」(p. 105)
まさか、ラブコメタッチの少年漫画で、こんな台詞を見るとは思いもしなかった。

絶好調の波に乗る本作品。主人公の決め台詞、「エンディングは見えた」を楽しみに、次巻を待つ。


▼過去の記事▼
『神のみぞ知るセカイ(1)~(6)』
『神のみぞ知るセカイ(7)』
PandoraHearts 望月淳 スクウェア・エニックス 既刊11巻



15歳の成人の儀式の最中、バスカヴィルの民と呼ばれる者らに襲われ、アヴィスという監獄に落とされたオズ=ベザリウスは、アリスという少女と出会い、契約を交わすことによって、地獄から抜け出す。
謎を追い求めて向かったかつての首都、サブリエから帰還したオズ一同。バルマ公の情報を基に、過去の謎を解くために、トール村へと出向く。オズは、先祖のジャックが残した小箱を受け取り、事が円滑に運んだと思われたとき、過去にも起こったとされる、謎の首狩り事件が発生する。

謎の多い本作も、徐々に過去の事実が判明し、各人の思惑も少しずつ輪郭をはっきりさせてきた。そんな中、オズとその従者、ギルバートが心の奥底に仕舞い込んでいたはずの暴力性が、確実に頭角を現してきた。それは、悲劇の序章となるのか。それとも、2人は運命に抗い、過去の因縁から解き放たれることができるのか。

『PandoraHearts』には、表面上は平静を貫き、穏やかな様子を見せることに長けていても、内面には怒り・憎しみ・悲しみといった強い感情を抱きながら、日常を生きる人物が多い。しかも、その烈しい感情は、100年も前の出来事に起因する。過去の人生の跡が尾を引いて歪んだ性格となった者、達観した者。それぞれの目に映る世界はどんなものだろう。過去の人生に囚われる彼らにとって、「自由」や、「自らの意思」といった言葉は、意味を成すのだろうか。


◇過去の記事◇
『PandoraHearts (1)~(10)』
ヤンキー君とメガネちゃん 吉河美希 講談社 既刊16巻



学校一の問題児とされる品川大地が、メガネをかけた元不良の学級委員、足立花に振り回されつつ、学校生活の楽しさに気付いていくという物語。元引きこもりの千葉、転校生の姫路、元暴走族の和泉を交えた生徒会が本格始動する。生徒会メンバーは、学内の問題解決に奔走しつつ、修学旅行や文化祭といった学校行事にも取り組み、高校2年生を過ごす。

前回の記事で、ドラマ化したら人気出そうという記事を書いたところ、今春からドラマ化が決定した模様(公式HP)。やはり、自分が考えるようなことは、ばっちりテレビ局の人間も考えているようです。

足立と品川が繰り広げる破天荒なギャグ漫画という路線から方向転換し、生徒会メンバーと、他の生徒との交流、主人公の成長に焦点が置かれるようになる。主人公たちが通う紋白高校には、外から見れば普通でも、実は問題を抱えている生徒が多い。そのような生徒に、学校での居場所を見つけてもらいたいというのが、前生徒会長、秋田のメッセージ(実のところ、秋田自身、裏を持った人物)。生徒会の各面々が、自分の経験や特徴を活かして、問題とぶつかっていく。ギャグ漫画に留まらず、青春物の体裁を帯びてきた。

それでも、驚いたときのオーバーリアクション、表情など、ギャグ漫画的な良さは残る。温かみが増したストーリーと相俟って、読むと元気がでる漫画になっている。


◎過去の記事◎
『ヤンキー君とメガネちゃん(1)~(4)』
xxxHOLiC CLAMP 講談社 既刊16巻



アヤカシが見えるという四月一日君尋は、自分の持って生まれた性質を取り除く対価を支払い終えるまで、次元の魔女、侑子の店で働くことになってしまった。侑子の元に訪れる、様々な客や、同じクラスの百目鬼、ひまわりと関わることで、四月一日は、様々なことを学んでいく。

今までのような、少しのんびりとした生活は長くは続かなかった。四月一日を取り巻く環境と人々に、変化が訪れる。女郎蜘蛛から右目を奪われる四月一日。自分を犠牲にすることで誰かを助けようとすることで、逆にその人を傷つけることになってしまうことを思い知らされることになる。これまでの優しい性格はそのままに、四月一日は成長を見せる。

そして、四月一日が好意を持つ、ひまわりの正体も明かされることに。この先、四月一日、百目鬼、ひまわりの三者の関わりが、今まで以上に密接になるであろう。それぞれが自分に課せられた宿命を背負いながらも、それに抗おうとする。四月一日の固い決意のもとに届けられた1羽の鳥は、かすかな希望を照らし出してくれる。人に、生きていて良かったと思わせることができる、四月一日の純真な優しさが光る場面である。

世の中にあるのは必然だけとするのが、本作の世界観。しかし、その必然の中でどう運命を切り開いていくかによっては、思わぬ収穫もあり、人生も捨てたものではないと思える。運命と自ら向き合う強さと優しさを伝えてくれるエピソードに溢れ、読む者に勇気を与える。


◆過去の記事◆
『xxxHOLiC (1)~(5)』
銀塩少年 後藤隼平 小学館 既刊2巻



高校生のマタタキは、幼馴染みのミライにずっと恋心を抱くと同時に、彼女の姿を写真に収めてきた。2人の仲は良い。だけど、恋人同士になろうという決意はできず、マタタキは日々を過ごしていた。一見平穏な日々は、少しずつ変化に向かって動いていた。ある日、写真を現像すると、撮影したはずのない、ミライがテニス部のコーチである大学生の幸田と結ばれている写真が浮かび上がってくる。そして、なぜか自分が死んでいる写真までも。マタタキは、未来を映し出した写真にショックを受けたものの、幸田に宣戦布告をし、何とか自分の未来を変えて見せると決意する。

未来を自分の手で変えようという王道ストーリーでありながら、主人公は不器用で控えめで、だけど自分の大きな目標に向かって進む強さは持ち合わせているという設定が、何とも現代にマッチしているように思う。特殊能力もなく、顔立ちも平凡な少年が、時に弱気に、時に強気に自分の未来と戦う姿は、共感を呼ぶのではないだろうか。さらに、恋のライバル、幸田は大学生。マタタキよりも一回り洗練された言葉遣いに、金銭力。それに加えてテニスの実力は、ヨーロッパ遠征に行くほど。主人公の弱さが際立つ。まざまざと力の差を見せつけられてしまう主人公は、自分の取り柄である写真に、ミライへの想いを託そうとする。

マタタキに好意を寄せる、クラスメイトの新見さんが絡んでくることで、主人公の周りに四角関係ができあがる。彼女は、本当にストレートに自分の想いを伝えてくる存在。ミライとは違ったまっすぐさがあり、魅力的である。「恋愛ってそんな…早い者勝ちなの?」という台詞は、ひたむきさと切なさの入り混じった印象に残るもの。
もちろん、マタタキの幼馴染みも、素敵な存在。活発で、優しさも併せ持つ。それぞれに一途で魅力的な登場人物によるやり取りは、青春の1ページを飾るのに相応しい。

結末は、ある程度は想像がつく。そこまでの過程がどうなるかが、本作の見どころになるだろう。


クラブサンデー『銀塩少年』
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