僕らはみんな河合荘 宮原るり 少年画報社 既刊5巻
親の転勤を機に、高校生から一人暮らしを熱望した宇佐は、家賃が安く、賄い付きであるという条件を親から提示され、河合荘というところでの下宿を決意する。しかし、そこは変人の巣窟であった。憧れの河合律先輩は読書オタクのぼっち、同室の城崎はドMの変態、OLの麻弓は巨乳美人だが性格に難ありで男運ゼロ、女子大生の彩花は計算ずくで男心を鷲掴みにする悪女… 中学時代に変人達とうまく付き合っていたゆえに、変人処理班、略して「変ショリ」と呼ばれていた宇佐は、またしても変人に囲まれる生活を余儀なくされるのだった。
アニメ化を機に、原作も購入してみた作品。本作の魅力は、何といってもヒロイン河合律の魅力に尽きる。読書好きで1人でいることが苦でないために、いつの間にかぼっちキャラの地位を獲得してしまった彼女だが、時には人との関わりが欲しいと思うことはあるし、大好きな本について語り合える人がいればと思うこともある。そんな律が、不器用にも宇佐をはじめとする河合荘の人々と関わる中で時折見せる豊かな表情や仕草に魅せられる。
また、個性的な人々が集まり、かなりひどいことを言ったりしつつも、何だかんだで互いを尊重し、大切にしている河合荘の雰囲気も、読者として温かい気持ちになる。特に、宇佐が中学の友達とその合コン仲間からひどい扱いを受けた時の河合荘全員による救出劇や、麻弓が高校の同窓会に行った帰りに城崎が迎えに行くエピソードは微笑ましく、互いを認めてくれる仲間の素晴らしさを感じられる。そして、皆の心の支えとなっている寮母の河合住子は、河合荘を象徴するかのように変わり者を自然と受け入れられる広い心の持ち主で、物語の中でも重要な役割を果たしている。
本作の随所に出てくる下ネタは好き嫌いの別れるところであろうが、それはあくまでセリフまわしでのこと。ヒロインのパンチラなどは皆無で、絵の面で一線を越えることがないのが、むしろ爽やかとも言える。