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自分が読んだ漫画の記録です。昔読んだものから最近のものまで、少しずつ揃えるつもりです。 コメント、トラックバック、お気軽にどうぞ。
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このはな綺譚 天乃咲哉 幻冬舎 既刊1巻



此花亭は、夢と現の間に存在するという不思議な宿で、取り仕切っているのは人間の姿に似た狐である。本作は、主人公である柚を中心に、此花亭に起こるほのぼのとした出来事を描く。

狐のお宿の物語が約4年半ぶりに帰ってきた。仲居を中心にしたほのぼのとした作風は健在で、以前からの雰囲気が活かされているのが嬉しい。第3話「カメのおんがえし」は、浦島太郎物語のパロディーで、もし本当に浦島太郎のような出来事が起こったら、現実にはどんなことになるだろうかということを扱った笑い話。第5話「てのひら」は、最後にすべての謎がつながるミステリー要素を持った、これまでの天乃作品らしい雰囲気の話。その他の話も含めて、またこの作品を楽しめるんだという期待を感じさせられ、何とも幸せである。

一迅社の『百合姫S』では休載が続き、更には『百合姫S』が休刊となり、長い時が経っていた。作者のHPの情報によると、ハーレムものに変えるであれば連載を引き受けましょうという出版社はあったらしいが、あくまで当初の雰囲気を大切にしたいという意向を汲んでくれたのがコミックバーズだったらしい。これには感謝したい。


■関連記事■
『此花亭奇譚(1)』
『此花亭奇譚(2)』
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せっかち伯爵と時間どろぼう 久米田康治 講談社 全6巻



サンジェルマン伯爵が現代に暮らす人類のもとに降り立ち、早1年。伯爵の妹であるミチルの時命(寿命)は尽き、伯爵はミチルを救うべく、1年前に戻るという時間旅行を始める。しかし、始めてみると、何だか変な感じの旅だった… そう、その旅とは、並行世界を股にかけ、理不尽な作品打ち切りエンドを回避し、物語を無事に着地させるための旅だったのだ。

打ち切り確定から続いた旅を収録した最終巻。打ち切りを意識しての展開なので、もうこれで終わるという自虐的な雰囲気に満ちた展開であった。それでも、最後にミチルと伯爵が選んだ結末は、希望に満ちた、それでいて微笑ましくもある結末で、伯爵が求め続けた大団円に値するものだったのではないかと思う。

下ネタ解禁が魅力というか、特徴の本作だった。が、やはり伯爵と卓の旅を完結させた作者には、講談社からの旅立ちが待っていたようだ。次は活躍の場を白泉社に移すという情報も入っているが、次回作はどうなることか。いつか、どこかで、また久米田作品に出会えることを信じて、本作のレビューを終わりたいと思う。。


◎過去の記事◎
『せっかち伯爵と時間どろぼう(1)』
『せっかち伯爵と時間どろぼう(2)(3)』
『せっかち伯爵と時間どろぼう(4)』
『せっかち伯爵と時間どろぼう(5)』
リューシカ・リューシカ 安倍吉俊 スクウェア・エニックス 既刊9巻



主人公の空想少女リューシカの行動や発想は、大人になると「当たり前」という発想のもと忘れられてしまう、在りし日の瑞々しい感性を思い出させてくれる。全編フルカラーの美しい絵で描かれる、どこか哲学的にも感じられる物語の単行本は9冊目を迎えた。

大人である作者が子どもの感性で作品を描く以上、どこかでネタが尽きるのもある意味当然だよなと思っていたのだが、ついに単行本は9巻である。作者の引き出しの多さには感服する。

リューシカの語彙が増えたなと思えるのが、その48「うちゅうのひみつ」である。UFOの存在について語る小松遊歩に対して、「科学的」という言葉を使いながら真実をつかもうともがくリューシカの姿が微笑ましくも、子どもの発達の速さを実感するエピソードである。

そして、ちょっとした出来事から徐々に哲学的な話題、そして子どもの成長について考えさせるところまで発展する秀逸なエピソードが、その51「しかくくていいのか」だ。以前、スイカの外見と中身の違いに驚いていたリューシカも、今では四角いスイカを見て驚くくらいになった。リューシカは、四角い枠にはめられて四角いスイカができると教わり、スイカの立場からしたら窮屈で可哀想だと考える。すると、四角い枠にはめられて育つスイカは可哀想だが、同じく教育という枠にはめられて育つ人間も可哀想ではないかと、兄が問いかけ、その問いかけに対してリューシカは真剣に悩む。かつては言葉など知らず、言葉を介さない思考をしていたリューシカも、いつの間にか言葉という枠にはまった思考をするようになっていたと気付く。大人から見ればまだ子どもでも、リューシカは徐々に大人への道を歩み始め、いつしか子どもの思考から脱却するのだということを感じさせられた。

◆過去の記事◆
『リューシカ・リューシカ(1)』
『リューシカ・リューシカ(2)』
月刊少女野崎くん 椿いづみ スクウェア・エニックス 既刊6巻



テレビアニメも好評、そして「このマンガがすごい!2015」のオンナ編第5位ランクインと、大いに盛り上がっている作品。少女漫画家の武骨な男子高校生、野崎梅太郎と、彼を取り巻く人達によるコメディを軸に、時にラブコメ、時に漫画制作の舞台裏を織り交ぜる構成にはますます磨きがかかる。

野崎と佐倉、若松と瀬尾、堀と鹿島の関係は、今回も3歩進んで2歩下がるくらいの進展か。みんな自分の気持ちに素直に気付けばな・・・と思ってしまう。漫画裏話は、雑誌の特集について。あんな編集会議が現実にされているとしたら、剣さんのような真面目な人は可哀想だ。本作の特徴だが、なぜ1人1人が真面目に考えて発言しているのに、それが集まるととんでもない方向に議論が進み、笑いを生むのか。作者の構成力があまりに巧みで脱帽してしまう。


☆過去の記事☆
『月刊少女野崎くん(1)~(4)』
『月刊少女野崎くん(5)』
瑠璃宮夢幻古物店  逢坂八代 双葉社 既刊2巻



美人店主、瑠璃宮真央が営む古物店は、人間が長く使うことで不思議な力が宿った道具を売っている。その店にやって来て道具を手にした人々は、大きな力を手にする。しかし、利用の仕方は本人次第であり、使用者は取り返しのつかない破滅の道へと堕ちていく危険とも向き合わなくてはならない。本書は、瑠璃宮と古物店に集まる人々の交流と、道具を手にした人間の結末を描く。

第1巻では、不思議な小道具を失ったせいで家族が崩壊してしまったエピソードが描かれた。第2巻では、その家族から逃げてきた少女、白石要も店員として加わる。自らも古物によって悲惨な運命をたどった要は、自分の力で古物に関わる人々のことを救いたいと思い、瑠璃宮古物店で働くことを決意したのだった。しかし、人を救うという行為は現実には容易なことではない。第1巻と同様に、各々の人間が道具をどう使うかについて道標を示すべきなのか、それとも人間の自由意思に任せるべきなのかという問題にぶつかる。他人の生きる道を支援したいという気持ちは、称賛すべき利他主義と言えるのか、それとも己の価値観を押し付けるパターナリズムに過ぎないのか。考えさせられる。

そして、第2巻から登場する謎の人物が、青木紀子という名の少女である。小道具によって苦しめられている人々のもとに現れ、道具を使う前まで記憶を巻き戻すという特殊能力を使って問題を解決しようとする。瑠璃宮をひどく恨んでいること、第1巻に出てくる不思議な鏡によって醜い顔に変貌させられた姉妹の苗字は「青木」であったことを勘案すると、行方をくらませた姉の変わり果てた姿という可能性もある。

謎多きダークな物語の続きが気になるところだ。


◎過去の記事◎
『瑠璃宮夢幻古物店(1)』
SHIROBAKO 〜上山高校アニメーション同好会〜 作画/ミズタマ・原作/武蔵野アニメーション・脚本/杉原研二 アスキー・メディアワークス 既刊1巻



現在放映中のTVアニメ「SHIROBAKO」。高校時代にアニメーション同好会を設立し、文化祭で自主制作アニメを上映した女の子達5人は、約3年後社会人や大学生となり、皆で一緒にオリジナルアニメを作るという夢に向かって日々努力する。5人を中心にしつつ、他にも多くの人物を登場させ、アニメ制作の現場の喜びや苦悩を描いた骨太の人間ドラマである。漫画版は、そんな5人の高校時代を描いたスピンオフで、主人公には、絵を描くのが好きだが引っ込み思案で自分の絵に自信を持てない女の子である安原絵麻を据えている。第1巻は、アニメーション同好会の設立に至る過程と、5人による自主制作アニメ「神仏混淆七福陣」の制作が動き出すところまでを扱っている。

読んでみてまず思ったのが、オリジナルのアニメに非常に忠実で良質なスピンオフであるという点である。原作は同じく「武蔵野アニメーション」で、脚本家も別に用意し、作画もアニメの作画を意識した描き方で、アニメを観ている人間としても全く違和感を感じない。しずかがかつて声優を目指すために演劇部に所属していたが、アニメーション同好会の本気度を見て退部を決意したというエピソードは、アニメの中でしずかがお芝居に関心を抱いている部分とつながるものであり、なるほどと思った。美沙が絵麻の絵に触れていく中で3DCGへの道を決意する場面も、アニメの場面を補足するようになっている。アニメの第1話に出てくるシーンも取り入れてあり、アニメのファンが十分に楽しめる内容になっている。作画のミズタマは、これまでも女の子が多く登場する作品を描いてきたが、ここまで原作の絵を丁寧に再現しつつ、アニメでは描かれていないストーリーを描き込める人物は稀有ではないだろうか。素直に感動してしまった。

絵麻を主人公にすることで、アニメとはまた少し違った視点で5人の関係を垣間見ることができるようになっているのが、漫画版の魅力である。アニメの主人公であるあおいとは、対照的な性格で釣り合いをとれる部長・副部長のコンビを組み、声優志望のしずかとは、アニメに向かう真剣な気持ちという面で心が通じ合い、3DCG志望の美沙との間には、絵がわかる者同士ならではの絆が生まれる。また、アニメでは詳細に描かれることのなかった、アニメの道に進むことに反対する父親を説得するという課題も丁寧に描かれるのではないだろうかという期待がある。

アニメ放送は3月で2クールの放送を終えるため、漫画版はこの先どの程度続くのかは不明だが、期待を大きく上回る内容で非常にわくわくしている。
せっかち伯爵と時間どろぼう 久米田康治 講談社 既刊5巻



各時代の様々な地域に点在し出現する時間旅行者である上人類の底辺に属するサンジェルマン伯爵が、現代に暮らす人類のもとに降り立ち、次元の違いについて語る物語。伯爵の妹であるミチルの時命(寿命)はもはや尽きようとしていた。最後の時を、愛する卓とともに過ごそうと決意するミチルの姿を見ていて居たたまれなくなった伯爵は、妹に思い出を残してやりたいという思いを胸に、残された命を使って決死の時間旅行に出かける。

いよいよ物語が終盤に向かって動き出した。果たしてサンジェルマン伯爵は自らの希望を果たせるのだろうか…というところで第1部が完結となった。これまでの1年間を再び過ごし、妹に思い出を残そうとするのだが、ここにきて打ち切りが決定(巻末の作者コメントで自虐的に発表される)。サンジェルマン伯爵の命という意味でも、連載に残された時間という意味でも、残りはわずかとなった。過去への時間旅行に関してはSF的な設定も持ち出して面白いところだったのだが。

卓が人類、上人類をも超えた長寿の人種であったという事実も発覚し、様々な点で終盤に向けての材料が出揃ってきたように思う。結末がどのようになるのか期待しつつ、第6巻の発売を待つ。


◎過去の記事◎
『せっかち伯爵と時間どろぼう(1)』
『せっかち伯爵と時間どろぼう(2)(3)』
『せっかち伯爵と時間どろぼう(4)』
SHIROBAKO 武蔵野アニメーション原作 P.A.WORKS制作

久々にアニメに関する記事を書きたいと思わせてくれたのが、10月から放送中の「SHIROBAKO」。
高校時代にアニメーション同好会に所属し、いつかそのメンバーでオリジナル作品を作ろうと誓い合った5人の女の子達を中心に、武蔵野アニメーション(通称ムサニ)というアニメ制作会社を舞台として、アニメ業界に関わる人々を描いた群像劇である。

第1話は5人の高校時代から始まるが、それはあくまでも序章。その2年半後、先に高校を卒業した宮森あおい、安原絵麻、坂木しずかは、それぞれムサニの制作進行、同じくムサニのアニメーター、声優の卵として歩み始めていた。あおい達の1年後輩の藤堂美沙は、3Dクリエーターとして就職。また、2年後輩の今井みどりも、アニメ脚本家を目指し、大学での学びに励んでいる。各々が自らの夢に向かって第一歩を踏み出したように見えたが、現実は厳しい。仕事や将来に対する悩みや不安を抱えながらも、5人は励まし合いながら、日々を生きる。

初めは女子高生のゆるゆる部活アニメかという雰囲気で、アニメーション同好会の描写から始まるのだが、あっという間に舞台は一転、あおい達の卒業から2年半後へと変わる。1回の放送では到底覚えきれないほどの膨大な数の登場人物や、容赦なく語られる専門用語もあり、敷居が高い感じもするのだが、慣れてくるとどんどん話に引き込まれる。納品に間に合うかという時間の問題、手書き作画と3D作画の確執、なかなか決まらない最終話の流れなど、一難去ってまた一難という手に汗握る展開があるからである。きつい労働条件にも耐え、アニメを愛する熱い思いを胸に秘めて働く人達の姿を見ていると、勇気と希望が湧いてくる。

そしてもう1点、本作の魅力的なところは、主人公の5人がぞれぞれに悩み、葛藤する姿を描いた、お仕事ドラマ的な部分であろう。あおいは、アニメに関わりたいという一心でアニメ制作会社に就職し、新人でありながらもしっかりと仕事をこなしているが、現在の制作進行の仕事の先にある、将来の自分の姿を描けず悩んでいる。絵麻は、自らのアニメーターとしの実力に自信が持てず、将来もやっていかれるか悩む。しずかは、オーディションを受けるが、まだアニメで名前のある役をもらうには至っておらず、アニメ声優になれるのかという不安を抱える。美沙は将来性のある会社に就職できたのは良かったが、会社の方針と自分の目指す方向にズレを感じ、退職を決意する。みどりは、アニメ脚本家になるための道筋が見えず、将来への不安を抱えている。それぞれは、夢に向かって大事な一歩を踏み出せたのだけれども、夢と現実の間にはまだまだ距離がある。きっと、職種が違えど多くの職業人が共感できることであろう。悩みに精一杯向き合い、困難を乗り越えようとする主人公達の姿には大いに励まされる。

2クールのアニメなので、1月以降は後半戦が始まる。今後の展開が非常に楽しみなアニメである。

追記
第1クールの最終話に当たる12話は、劇中劇「えくそだすっ」の最終話完成に向けてスタッフが総力を挙げて仕事に取り掛かるという話だった。監督がギリギリのところで辿り着いた最終話は、主人公達が絶体絶命のピンチに陥った時、カウボーイが馬100頭を連れて現れ、主人公達は馬に乗って逃げるというびっくり展開。この無茶極まりないシーンの馬の作画ができる人が探せず、万策が尽きる寸前に出された案は、ムサニ1番の長老、杉江に作画をお願いするというものだった。作画の仕事を通して、「まだ自分にもやれることがあった」と輝きを取り戻す杉江の姿に心打たれた。原画ができあがり、その絵が動き、絵に色が付き、音声が入るのは、アニメとして至極当たり前のことだが、それが1歩1歩着実にできあがっていく様子を見て、最後に完成版のアニメを見たときは、スタッフと一緒に感動して涙が出そうだった。


◆公式HP◆
shirobako-anime.com
私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い! 谷川ニコ スクウェア・エニックス 既刊7巻



喪女の高校生、黒木智子(もこっち)の切ないぼっち生活を綴った物語。高校2年生の夏、もこっちは、かつてともに級友を奪い合った仲である、こみなんとかさん(小宮山さん)とひょんなことから再会を果たす。相手より少しでもぼっちでないところを見せては勝ち誇った笑顔を見せるという戦いを繰り広げるのだが、互いにとって中学時代の友人であるゆうちゃんと3人で居合わせたことをきっかけに、すっかり行動をともにするようになってしまった。

夏休みといっても、ぼっちにとっての休みは、無駄に過ごす日々に等しい。それでも、高校2年生の夏は女子3人で遊ぶこともあり、表向きは充実しているようだ。相変わらず他人と行動をともにすると、他人とは何かが違う自分を実感し、自己嫌悪に陥ってしまうのは確かだが、他人と関わるもこっちの姿は活き活きしているなと思ってしまう。

ところどころに出てくる、ぼっちならではの虚しいエピソードは相変わらず毒気たっぷりだ。スクールカーストの上位者に話しかけられただけで、うっかり喜んでしまったり、教師のお節介を本気で恨んだり… また、真夏の野球応援のエピソードは、かつて作者自身が恨みを持っていたという野球部が題材なだけに、相当気合が入っているように感じられた。もこっちが語る野球部批判のセリフは、まるで作者の心の叫びを代弁しているかのようだった。

作者もびっくりかもしれないが、連載はついに4年目に突入した。海外での思わぬ反響に、アニメ化と、徐々に世に認知されていくぼっち漫画。これからもぼっちの内面を、時に哀しく時に滑稽に、そして時に温かく、描いていってもらいたい。


◇過去の記事◇
『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!(1)』
『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!(2)』
『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!(3)』
『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!(4)』
『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!(5)』
詠う! 平安京 真柴真 スクウェア・エニックス 既刊5巻



主人公の藤原定家は、京都への修学旅行中に起こった事故が原因で、平成の世から平安時代にタイムスリップしてしまった少年。現代に戻るための条件は、歴史上有名な歌人と出会い、和歌を集めること。定家は、表向きは言祝ぎの天女として小野小町とともに行動し、紀貫之や凡河内躬恒ら和歌の編纂に関わる人物との交流を深め、順調に和歌の収集を続けていた。しかし、怨霊と化した菅原道真の魔の手によって、定家とその周囲にいる人々に危険が降りかかる。

当初から、和歌に詠まれる心情や情景が現実の世界に反映されるというファンタジックな設定が特徴であったが、4巻、5巻ではその設定が存分に活かされていた。死に際の紀友則や、定家を助けようとする小野小町など、当時の人々がまさに命を懸けて紡ぎだした言葉に込められた思いが、自然を動かし、その場にいる人々の心をも大きく突き動かす。きっと、平安時代に生きる人々にとって、和歌の存在はそれくらい大きな意味を持っていたのだろうと思う。掛詞や裏に隠された解釈に関する解説も奥が深く、ちょっと物知りになれる。

さて、物語はいよいよ終盤。菅原道真によって操られた大友黒主によって命を狙われた定家は、小野篁によって危うく命を救われた。しかし、今度は在原業平に男としての正体を見破られてしまうという危機に直面する。また、言祝ぎの天女の力を手に入れようとする菅原道真との戦いも気になるところだ。作者によれば、次の6巻が最終巻。果たして、定家は無事平成の世に帰ることができるのか・・・


■過去の記事■
『詠う! 平安京(1)』
『詠う! 平安京(2)(3)』
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