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自分が読んだ漫画の記録です。昔読んだものから最近のものまで、少しずつ揃えるつもりです。 コメント、トラックバック、お気軽にどうぞ。
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いまさらノストラダムス 善内美景 メディアファクトリー 全2巻



20世紀末に地球が滅びるという盛大な予言を外したノストラダムスが、実はイケメンで現在なお生きていたら… という空想に基づいて描かれた物語の完結巻。1巻の終盤に登場した謎の人物の正体は、20世紀末に地球を滅ぼすとされていたアンゴルモアであった。何とかアンゴルモアは去り、破滅を免れたかのように思えた地球であったが、ノストラダムスは、隕石が地球に接近し、災難を巻き起こす未来を予見する。しかし、もはや彼の言うことに耳を貸す人などいない。人知れず近づく危機に対して、彼が選択する行動とは。

1巻は「ハートフル日常コメディ」の名に相応しい内容であったが、2巻はコメディ色を残しつつ、ノストラダムスが現在も存命であるという設定が活きてくる魅力的な展開であった。20世紀末にノストラダムスが奇妙に感じたのは、人々は地球の滅亡を恐れるのではなく、むしろ楽しむ世論のあり方であった。地球の破滅までは明言していなかったノストラダムスの予言を、世間は拡大解釈して騒ぎ立てた。アンゴルモアの登場も、予言に従ってというよりも、人々が地球の破滅という危機ですらエンターテインメントとして消費しようとする欲望によってであったのだ。これは現実に起こっていることなのだと、無視されようと必死に現代の人々に向かって叫び続けるノストラダムスが、現代の私達に訴えかけるものは大きい。コメディの名を借りながらも、さりげなく文明批評にまで発展してしまった本作は、侮れない。

ちなみに、最後に収録された番外編は、読者が抱えるであろう疑問に対する回答とも言えるようなネタで構成されていて、興味深い。なぜ、ノストラダムスはお金に困らないほどの暮らしができているのか。心の弱いノストラダムスが情報の宝庫であるインターネットにアクセスしても大丈夫なのか。答えは読んでのお楽しみである。


◇過去の記事◇
『いまさらノストラダムス(1)』
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三島凛は信じない! 倉薗紀彦 アスキー・メディアワークス 全3巻



才色兼備の女子高生、三島凛が率いるオカルト撲滅研究会(通称O.B.K)のメンバーが不思議現象の解明に臨む物語の最終巻。これまでの不思議現象の謎が明かされるとともに、三島凛と主人公の芥川周太郎は、とんでもない真実を知ることになる。

傍若無人な三島凛に、主人公の芥川周太郎が振り回されつつも、谷崎綾目、有栖川といった仲間が増え、盛り上がってきたO.B.K。これまで、凛が謎を解明した後にも彼女が知らないところで謎が残り続けていたが、最終巻は、いよいよその謎の核心に迫ることになる。どこかほんわかした部活動もののようだった雰囲気から一転、超展開となる。

人口爆発を抑えきれなかった未来の社会は、情報技術を発展させ、多数の人々を一室に閉じ込め、脳内に映し出された仮想世界に住まわせることで、問題の解決を図っていた。しかも、その仮想世界はすでに現在の世の中にも適用されていて、凛や周太郎が暮らす世界も、未来社会が作り上げた仮想世界であった。不思議現象は、そのような仮想世界を構築する過程で生じたバグであったのだ。少数の人間による支配が進んだ未来世界の支配者層にとっては、世界の矛盾に気付き、優秀な頭脳を持った三島凛は脅威の対象でしかなかった。そんな凛を見張る存在として、未来社会から送り込まれたAIが、有栖川だった。九死に一生の場面を有栖川に救われた凛と周太郎は、世界の行く末を選び取るという大きな選択に直面することになってしまった。

まさかまさかの超展開となった本作だが、SFとホラーの入り混じったような展開に、思わず引き込まれた。凛と周太郎の選択は、現状でのベストに過ぎず、まだ彼らの戦いは始まったばかりと言えるかもしれない。それでも、有栖川の用意した粋な贈り物を無駄にせず、2人は強大な敵と戦い続けていくのだろうな期待しつつ、本を閉じた。


◎過去の記事◎
『三島凛は信じない!(1)』
『三島凛は信じない!(2)』
となりの柏木さん 霜月絹鯊 芳文社 既刊7巻



オタクな高校生、桜庭雄斗と、隠れオタクの柏木琴子が繰り広げるラブコメは、ついに7巻に到達した。柏木さんに自らの気持ちを伝えて、恋愛への道を一歩踏み出した雄斗だったが、柏木さんは初めての告白に戸惑い、雄斗もその反応に対してあたふたしていて、2人の進展はマイペースでゆっくりである。

そんな中、急速に進展を見せたのが、雄斗の友人の和樹と、柏木さんの友人の清花だった。女性への気遣いができて、人間関係の処理も上手い(すなわち「リア充」の)和樹は、清花に一途な気持ちを伝え続け、最初は相手にしなかった清花も徐々に心を開いていく。2人は主人公達を追い抜いて、早々と恋人同士になってしまった。和樹は、やっぱりイケメンだなあ。清花のツンデレな面を見事に引き出してしまった。彼女の「敵わない」という言葉にも納得。

一方、進展しない恋に思われた、雄斗と柏木さんの関係だったが、雄斗は柏木さんへの思いを強め、柏木さんは雄斗への恋愛感情に徐々に気付きつつあるのだった。牛歩の歩みとも言える2人の恋の良い起爆剤となったのが、留学生として転校してきたティナの存在だ。共通の趣味をきっかけに、雄斗とティナは仲良くなっていくのだった。これまで雄斗と近しくなる女性がいなかった分、安心できていた柏木さんにとっては、初めて訪れた危機。柏木さんの心はもやもやするばかり。結局のところ、ティナには彼氏がいて、三角関係には至らなかったのだが、自分の気持ちを意識し始めた柏木さん。離れていた距離が少しずつ近づくのだろうか。

主人公達は高3に進級し、各々の進路とも向き合う時期になっていく。初々しさ満点で、青春の甘酸っぱさに溢れる物語を、今後も見守っていきたい。

◇過去の記事◇
『となりの柏木さん(1)』
『となりの柏木さん(2)』
『となりの柏木さん(3)』
高橋さんが聞いている。 北欧ゆう スクウェア・エニックス 既刊1巻



現役女子高生アイドルである、高橋エナは、日々アイドルとして成長すべく奮闘しているが、悩む時や辛い時はある。そんな時は独り静かにヘッドホンを着用する。周囲の人間は、エナがどんな時にも音楽を聴いて自分の仕事の糧にしているのだと思っているが、実はエナは音楽を聴いてなどいない。ヘッドホンは、人には言えない趣味のカモフラージュに過ぎない。その趣味とは、クラスの委員長、奈良君と地味系男子の御影君の会話を盗み聞きすることである。誰にも言えない趣味に没頭する高橋さんの日々を描いたギャグストーリー。

面白いことを考えたものである。電車の中など、ついつい他人の話を盗み聞きして、思わず笑いそうになった経験をしたことがある人もいるのではないだろうか。それを日常茶飯事に行っているのが、本作のヒロイン、高橋エナである。しかも、盗み聞きの相手は、クラスの人気者である委員長の奈良君と、どちらかと言うと地味で友人の少なそうな御影君である。この2人、級友からは全く正反対の扱いを受けているにもかかわらず、とても話が合う。いや、むしろ合いすぎて、双方がボケに突っ走る有様である。共にボケる2人に対して適格なツッコミを素早く行うのが、その場にいるべきではない高橋さんなのだ。2人のぶっとんだやり取りと、間髪入れない高橋さんのツッコミが、本作最大の笑いどころだ。

しかし、本作はこれだけがすべてではない。2人の会話を盗み聞きする過程で、アイドルの卵である高橋さんがアイドルとして大切なものを結果的に自然と身に付けていくという成長物語でもあるのだ。盗み聞きのために彫刻の陰に無理な姿勢で隠れたことをきっかけに、ヨガのレッスンにやる気を出すといった、若干馬鹿馬鹿しいものが多い。また、規定路線ではないオリジナルのアイドルを目指すというプロダクションの方針に戸惑いを見せた高橋さんを励ましたのは、御影君の言葉がもとである。人間はそもそも生まれた時から地球の公転と自転というレールの上に乗っかっているのだから、これ以上レールに乗る必要はないという発想は、斜め上からの発想で爆笑必至である。ただのどうしようもないやり取りが知らぬ間にアイドルを勇気付けているなど、会話の本人達は知るよしもない。

2巻は2月に発売予定と、刊行ペースが速い。今度はどんなことになるのか楽しみである。
坂本ですが? 佐野菜見 エンターブレイン 既刊2巻



2013年の漫画界の話題を集めた作品が、これである。県立学文高校の1年2組には、入学早々から学校中の注目を集める生徒がいた。その生徒こそが、坂本である。彼の行動は、スタイリッシュそのもので、人々を魅了して止まない。女子生徒からの視線も熱く、当然それを良く思わない輩もいる。しかし、坂本の行動は凡人の予想を遥かに凌駕するもので、不良の生徒や見栄っ張りな教師など、坂本を陥れようと企む者たちの干渉をものともしない。不良の生徒も、坂本のことを恐れたり、優秀さに脱帽して、手を出してこない。

本作の体裁はギャグ漫画ということであろうが、一般的なギャグ漫画と比べて作画が極めて端正で巧いところに特徴がある。不良の生徒なんて、そのまま少年チャンピオンの漫画に登場してきてもおかしくないくらいの出来栄えである。時にリアル、時に美しい作画があるからこそ、数々の名場面が生まれ、常に予想を上回る坂本の行動に感心させられたり、思わず笑ってしまったりするのであろう。

坂本の行動は、読者の一歩二歩先を行くものばかりである。女子に争わせながら、心理学の理論を検証してみたり、わざと教師を怒らせて教室から出て行かせておいて、怪我した雀にご飯を与えたりと、最後まで読まないとわからない。読者は謎解きをしているかのような感覚に襲われる。そしてまた、いわば「オチ」になる坂本の真意がわかるコマは、決まって大きなコマで、いちいち大袈裟に描かれる。作画の素晴らしさとも相俟って、作中の人物同様に感心してしまったり、思わず「これは現実にはあり得ないだろ!」と突っ込んでしまいたくなったりするのだ。

常軌を逸した行動も、極限まで行けば「スタイリッシュ」の領域に到達する。作者の発想力に感嘆させられつつ、今後も続いて欲しいと願う作品だ。
クジラの子らは砂上に歌う 梅田阿比 秋田書店 既刊1巻



砂がすべてを覆い尽くす世界で、砂の海を漂う巨大な漂泊船“泥くじら”には、500人もの人々が暮らしていた。外界とは一切交流がなく、外の世界に人間が存在するのかさえ知らない人々の多くは、“サイミア”という超能力を操る短命の種族であった。そして、船の中の政治は、超能力の使えない分長命である人間が担っていた。ある日、泥くじらの前に謎の漂泊船が現れる。少年チャクロは、好奇心に駆られ、漂泊船の中に入り、1人の少女と出会う。洋服の刺繍にあった文字から、その少女はリコスと呼ばれ、泥くじらに連れて帰られる。外の世界に人間がいることに驚く泥くじらの民であったが、リコスとの出会いが悲劇の始まりであった。

砂の海を舞台にした、独自の世界観を持ったファンジー作品。序盤は温かい雰囲気の日常が描かれているが、平穏な日常は長くは続かなかった。ピエロの仮面を被った人々が次々と泥くじらに上陸し、人々を殺していくのだった。まだ多くはわからないが、泥くじらの人々は何らかの罪を負って生きているようである。外の世界からは「鯨の罪人」と呼ばれ、暦は砂刑暦というものにしたがっている。

リコスは自分の島で何をしたのか、そして、漂泊船に棲む謎の怪物ヌースの正体など、謎が多いが、とにかく世界観にぐいぐいと引き込まれていく作品である。泥くじらをはじめ、背景までがしっかりと描きこまれている。そして、乾燥した砂漠の世界に相応しい、淡い雰囲気のある人物の作画。掲載誌のミステリーボニータではファンを確実に増やしている注目作だ。
勤しめ!仁岡先生 尾高純一 スクウェア・エニックス 全8巻



子ども嫌いな中学校教師の仁岡と、不良のつもりでいる真面目ちゃん、浅井、自称現代をときめくチーマー、今江、何よりも遊びが大好きな上原、仁岡の中学時代そのものの前田、学級委員であることに妙な執着を見せる川﨑らの生徒によるギャグ漫画も、ついに最終巻を迎えた。8年間の集大成がここに!

1年に1冊しか単行本の出ない作品なので、8巻の発売イコール8年間の連載ということになる。細々とではあるが、密かな人気を得てずっと続いてきた作品だけに、終了は寂しい。いわゆるサザエさん的な時間の進み方のもと、生徒達が永遠に中学2年生を続けているからか、何となく作品の世界は終わりのない雰囲気を醸し出していた。作中では、何と仁岡がまだ新任1年目であるという忘れかけていた事実がさりげなく述べられている。8年間も続いた、教師の新任1年目と、生徒の中学2年生!それだけに、ふと訪れた終幕には寂しさを禁じえない。

意図してか、意図せずか、最終巻に収録されている話は、まるで今までの総集編のようだった。学校の屋上、お祭り、雑木林ではしゃぐ生徒達と、それに振り回される仁岡の姿、仁岡を愛して止まない河原先生の暴走、球技大会… 1巻からずっと続く基本路線に、1巻の時点ではいなかった前田や川﨑が加わって繰り広げられる大騒動は、相変わらずの面白さだった。特に、体育でダンスが必修化されたのを機に、皆がヒップホップの練習を始め、固い動きで変なラップを歌い出す話は、爆笑必至だった。元から言葉選びの上手い作者が、ここぞと韻を踏む台詞を連発し、大いに楽しませてくれた。

そして、最終話では、生徒達が仁岡について語る。その一言一言がまさに仁岡の人柄を表していて、しんみりしてしまった。極めつけは、最後の河原先生の台詞であろう。生徒達に慕われて(たかられて)いる仁岡の姿を見て、河原先生は「理想の教師かはわからないけど教師の理想ね」と語る。仁岡先生の魅力は、まさにこの一言に尽きる。中学生時代の自分を仲間外れにした同級生への仕返しも込めて、ガキを殲滅するために教師になったと言い張り、決して生徒に媚びないのに、実際には生徒から慕われ、課題作りや補習の計画にも熱心だ。そして、時には生徒と同じ目線で本気になって勝負したりもする。世間が求める教師像からは程遠いかもしれないが、誰もが、こんな先生が現実に1人くらいはいてもいいと思える、魅力的な教師ではないだろうか。もう新作が読めないのは寂しいが、ここまで続いた連載に感謝だ。


▼過去の記事▼
『勤しめ!仁岡先生(1)』
『勤しめ!仁岡先生(2)』
『勤しめ!仁岡先生(3)』
魔女の心臓 matoba スクウェア・エニックス 既刊3巻



妹から心臓を奪われ、不死の身となった魔女、ミカが、しゃべるランタンのルミエールとともに旅を続ける物語も3巻を迎えた。時はミカとルミエールの出会いの物語へと巻き戻る。ルミエールの元の姿は、村の人々を襲う竜であった。竜退治を任されたミカだったが、思わぬ出会いで旅の伴侶を得ることになったのだった。

生と死の境界を生きる魔女の物語は、魔女のことを慕ってたまらないルミエールとの出会いの物語から始まる。人々を襲う竜は、たとえ人間と親しくなっても、人間の短い命と向き合わざるを得ない運命に苦しんでいたゆえ、永遠の生を受けた魔女に惹かれていく。そして、徐々にミカという存在そのものにも心惹かれていき、ランタンとして生きることを選ぶのだった。気丈に振る舞うミカも、心に寂しさを抱えることはある。久遠の命を得ることの辛さを1人で背負わなければならないのだから。しかし、その辛さを紛らわせることができるのは、心の交流だ。3巻では、その他にも人間とともに暮らすエルフなど、人間の儚い生と向き合うものたちが描かれる。失うとわかっているのに、なぜ心の交流を求めてしまうのか。エルフは語る。「寂しがりやなだけよ」と。

その他にも、旅の途中で出会う人々との温かい交流が描かれる。その1つ1つのエピソードが、人間はなぜ生きるのか、そして儚い命を持ったものが心を通わすのはなぜなのかといった、根源的な問いを投げかけるものだ。いつものことながら、切なくも心の奥がほんのりと暖かくなるような物語の数々だった。


★過去の記事★
『魔女の心臓(1)』
『魔女の心臓(2)』
カラフル・クロウ 秋乃茉莉 秋田書店 既刊2巻



和歌山から東京へと転校してきた、短ランを着た絶滅危惧種ヤンキー、鈴木宙と、烏守神社を守るカラスのクロウの物語の第2弾。宙は、同じ学校に通う二宮みことと知り合う。みことは、近所の八幡神社の跡取りとして育てられている少女であった。烏守神社を守るべく、宙は新たな味方を得て奮闘する。一方、宙が惚れ込んだ学級委員長の立花沙織の秘密が明かされたりと、注目すべき点も多い2巻。

今回も、楽しい話やちょっと良い話が盛りだくさんの展開だった。2巻の第1話からは、宙にとってのもう1人の重要人物となる二宮みことが登場する。妖怪を見る霊力をもった彼女は、その能力を嫌っていたが、人に色が見えるという宙の能力を知り、宙に励まされたのをきっかけに、本来持っていた明るい部分も発揮できるようになる。立花沙織も交えた三角関係がここに成立する。

一方、立花の方は、烏守神社を取り壊してマンションの建設を進めようとしている立花建設の娘であることが判明する。これまでも、何となくそれを匂わせるような描写はあったが、初めて真実がわかるようになる。

宙と立花による生徒会長選挙の話やマンションのお祓い、神社のパワースポットとしての売り出し計画など、それぞれのエピソードが面白い。これらの経験を通して、宙が少しずつ東京での生活に馴染んでいく姿を見届けるのも、読者としての楽しみだ。時代錯誤ヤンキーだからこそ、人情に溢れ、周囲の人を惹きつけるのかなと思った。ちなみに、宙は定期試験の理数系の科目はすべて満点で、実は頭脳面も優れていた。『ヤンキー君とメガネちゃん』もそうだったが、イマドキのヤンキーは勉強ができないと支持されないのかなと思ってしまった。

■過去の記事■
『 カラフル・クロウ(1)』
隠の王 鎌谷悠希 スクウェア・エニックス 全14巻



六条壬晴は、無関心を装う平凡な中学生活を送っていたが、彼の身体には、忍の世界がかつて生んだ最強の秘術である森羅万象が封印されていた。壬晴の知らないところでは、秘術をめぐる争いが起こっており、壬晴を保護する萬天の人々と行動を共にするが、最強の戦力を誇る灰浪衆を前に、苦戦を強いられる。そこで出会った少年、宵風は、禁忌とされていた秘術である気羅の使い手であった。冷酷な心を持った宵風だったが、壬晴は彼と触れ合うことを通して、宵風と自分に共通する心の闇に気付いていく。禁忌の術は身体への負担が大きく、使い続けることは、命を削ることに等しかった。宵風の願いは、自らの存在を歴史から抹消すること。そのために、秘術の森羅万象を使うことを壬晴に要求するのだった。現代に生きる忍の物語。

これまでレビューの機会を逃していた完結作。現代を舞台にした忍者達の物語だが、そこに関わる人間同士が紡ぐ物語でもある。それぞれに魅力的な登場人物が多く、物語が進むにつれて、互いが互いに影響し合って心情に変化が生まれていく過程こそ、本作最大の見所である。

初めは萬天対灰浪衆という構図で描かれていた戦いが大きく変化するのは、壬晴の灰浪衆寝返りがきっかけである。敵同士であった壬晴と宵風は、徐々に互いに持つ寂しさが共感し、行動を共にするようになる。さらには、2人の灰浪衆脱退といった行動も、物語を大きく動かす事件だった。また、2人の周囲を取り巻く人物も、人間味のある非常に魅力的な人物ばかりである。壬晴の教師である帷、灰浪衆の戦術指揮の雪見、萬天に仕える忍者の清水兄妹は、独自の哲学を持って、萬天や灰浪衆といった枠を超えて共闘する仲間となる。それぞれの思いや願いも丁寧に描かれていて、終盤の感動に繋がっている。特に、物語の中盤で宵風が自らの願いを成就して存在を消した後の彼らの団結、ラストで森羅万象の封印に成功し、皆に宵風の記憶も戻った後の彼らの笑顔は、読者の心を大きく揺さぶるものであっただろう。

忍の世らしく、裏切りや寝返り、騙し合いといった駆け引きも豊富で、ファンタジー作品の多いGファンタジーの中では突出する魅力だったように思う。

人の洋服や風景くらいにしかトーンを使わない、白と黒を中心に使った独特の作画が特徴で、作品の世界観によく合っていたと思う。最初から最後まで目の離せない展開で、6年間にも及ぶ連載を続けた作者に感謝したい。
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