SHIROBAKO 武蔵野アニメーション原作 P.A.WORKS制作
久々にアニメに関する記事を書きたいと思わせてくれたのが、10月から放送中の「SHIROBAKO」。
高校時代にアニメーション同好会に所属し、いつかそのメンバーでオリジナル作品を作ろうと誓い合った5人の女の子達を中心に、武蔵野アニメーション(通称ムサニ)というアニメ制作会社を舞台として、アニメ業界に関わる人々を描いた群像劇である。
第1話は5人の高校時代から始まるが、それはあくまでも序章。その2年半後、先に高校を卒業した宮森あおい、安原絵麻、坂木しずかは、それぞれムサニの制作進行、同じくムサニのアニメーター、声優の卵として歩み始めていた。あおい達の1年後輩の藤堂美沙は、3Dクリエーターとして就職。また、2年後輩の今井みどりも、アニメ脚本家を目指し、大学での学びに励んでいる。各々が自らの夢に向かって第一歩を踏み出したように見えたが、現実は厳しい。仕事や将来に対する悩みや不安を抱えながらも、5人は励まし合いながら、日々を生きる。
初めは女子高生のゆるゆる部活アニメかという雰囲気で、アニメーション同好会の描写から始まるのだが、あっという間に舞台は一転、あおい達の卒業から2年半後へと変わる。1回の放送では到底覚えきれないほどの膨大な数の登場人物や、容赦なく語られる専門用語もあり、敷居が高い感じもするのだが、慣れてくるとどんどん話に引き込まれる。納品に間に合うかという時間の問題、手書き作画と3D作画の確執、なかなか決まらない最終話の流れなど、一難去ってまた一難という手に汗握る展開があるからである。きつい労働条件にも耐え、アニメを愛する熱い思いを胸に秘めて働く人達の姿を見ていると、勇気と希望が湧いてくる。
そしてもう1点、本作の魅力的なところは、主人公の5人がぞれぞれに悩み、葛藤する姿を描いた、お仕事ドラマ的な部分であろう。あおいは、アニメに関わりたいという一心でアニメ制作会社に就職し、新人でありながらもしっかりと仕事をこなしているが、現在の制作進行の仕事の先にある、将来の自分の姿を描けず悩んでいる。絵麻は、自らのアニメーターとしの実力に自信が持てず、将来もやっていかれるか悩む。しずかは、オーディションを受けるが、まだアニメで名前のある役をもらうには至っておらず、アニメ声優になれるのかという不安を抱える。美沙は将来性のある会社に就職できたのは良かったが、会社の方針と自分の目指す方向にズレを感じ、退職を決意する。みどりは、アニメ脚本家になるための道筋が見えず、将来への不安を抱えている。それぞれは、夢に向かって大事な一歩を踏み出せたのだけれども、夢と現実の間にはまだまだ距離がある。きっと、職種が違えど多くの職業人が共感できることであろう。悩みに精一杯向き合い、困難を乗り越えようとする主人公達の姿には大いに励まされる。
2クールのアニメなので、1月以降は後半戦が始まる。今後の展開が非常に楽しみなアニメである。
追記
第1クールの最終話に当たる12話は、劇中劇「えくそだすっ」の最終話完成に向けてスタッフが総力を挙げて仕事に取り掛かるという話だった。監督がギリギリのところで辿り着いた最終話は、主人公達が絶体絶命のピンチに陥った時、カウボーイが馬100頭を連れて現れ、主人公達は馬に乗って逃げるというびっくり展開。この無茶極まりないシーンの馬の作画ができる人が探せず、万策が尽きる寸前に出された案は、ムサニ1番の長老、杉江に作画をお願いするというものだった。作画の仕事を通して、「まだ自分にもやれることがあった」と輝きを取り戻す杉江の姿に心打たれた。原画ができあがり、その絵が動き、絵に色が付き、音声が入るのは、アニメとして至極当たり前のことだが、それが1歩1歩着実にできあがっていく様子を見て、最後に完成版のアニメを見たときは、スタッフと一緒に感動して涙が出そうだった。
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