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自分が読んだ漫画の記録です。昔読んだものから最近のものまで、少しずつ揃えるつもりです。 コメント、トラックバック、お気軽にどうぞ。
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ピカ☆イチ 槙ようこ×持田あき 講談社 既刊3巻



都内有数の名門校である愛種高校は、「常に人のために」「友を大切にする」「正々堂々とする」を生徒心得とする、真に優れた人材を輩出しようという学校。そんな学校に惚れて入学した鈴木太郎、鈴木花子の2人は、名は体を表すとでも言うかのような、平凡で目立たない高校生活を送っていた。しかし、愛種高校の実態は、特進クラスの生徒が成績最下位層の生徒に対して壮絶ないじめを平然と行う場であった。いじめの場を偶然にも目撃した太郎と花子は、自分にとっての理想の愛種高校を取り戻すべく、見た目を派手にして学校の不正と闘う覚悟を決める。

序盤の展開は、正義に燃えた地味な生徒による変身物語、そして、陰湿ないじめをする秀才達と、芯のある心を持った主人公達の闘いに焦点が置かれ、やや単純な印象を受けた。しかし、徐々に徐々にそのイメージは払拭されていった。いじめの黒幕であった道玄直治、その側近の三園了も、それぞれ心に傷を抱え、問題行動に走っていたのだ。悪役達の胸中が次第に明らかになるにつれ、物語が抱える複雑さが姿を見せてくるのだ。物語中で花子が感じたように、愛種高校の生徒心得を実現しようと理想に燃えるのも正義である一方、汚れた現実に直面し、その理想に愛想を尽かし、破壊行動へ向かうのもまた、もう一方の正義のように思えてしまうのだ。いじめは絶対の悪としながらも、正義対悪という単純な構図が崩れた時、花子の心情にも変化が生まれる。

もちろん、友情や恋愛といった、少女漫画の王道もたっぷりと用意されている。そして、自分達の力だけでは無力とも思えるような状況でも、果敢に立ち向かおうとする主人公達の姿に励まされることもある。青春時代の喜びから葛藤までがすべて詰まった作品だ。



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となりの柏木さん 霜月絹鯊 芳文社 既刊3巻



オタク一直線な高校生、桜庭雄斗と、隠れオタクの柏木琴子が繰り広げるラブコメの第3弾。絵師Sayaneが柏木さんであることがわかり、一気に盛り上がる雄斗。しかし、次々に絵のリクエストをする雄斗に対して、柏木さんはついに「私は桜庭くんの萌え製造機じゃない」と言い、2人の関係は気まずくなる。2人はこの状況を打開できるのか。

真面目でいて面白い。本作を読んでいて常に思う。一般に少年漫画のラブコメは、主人公の男のことが大好きな女性が複数登場し、優柔不断な主人公と女性達の間で起こる事件を面白おかしくまとめあげるものである。本作はこのような路線のラブコメとは一線を画している。主人公は1人の女性のことを大切に思っていて、他の女性との間で揺れたりしない。相手の女性も、ただ主人公のことを愛してやまないわけではない。男の行動に対して怒りを感じることもあれば、喜ぶこともある。要は普通の恋愛をしているのである。

それなのに、滑稽で微笑ましいことが起こるのが恋愛だ。裏表がなく、常に一直線な雄斗の行動を見ていると、どうしてこんなに笑ってしまうのだろう。それに対する柏木さんの返しを見ていると、どうしてこんなに微笑ましくなるのだろう。やや不器用ではあるが、お互いのことを大切に思う2人の関係は、とても爽やかだ。

人間関係に不器用な2人では、進展すべきものも進展しない恐れがある。そんなところで上手く救いの手を差し延べているのが、柏木さんの友人、福田清花だ。彼女自身もまた柏木さんのことが大好きなのだが、協力的に動いている。彼女が入った3人のやり取りがまた面白い。

さてさて、離れていた2人の心は一気に距離を縮めることになった。雄斗の思わぬ告白、そして、雄斗に対して「好き」の気持ちを持っていることを自覚しつつある柏木さん。しかし、その先に待つ「付き合う」という関係に対して戸惑いを見せる2人。純粋で心が温まる。

そんなストーリー展開の中に、ギャルゲーを利用して恋愛の予習をしようと奮闘する雄斗の姿が描かれたり、才色兼備と噂される自分に驚いてあたふたする柏木さんがいたりで、楽しい要素もバッチリ欠かさない。非常にバランスが取れていて、これぞラブコメ。


◇過去の記事◇
『となりの柏木さん(1)』
『となりの柏木さん(2)』
彼女のひとりぐらし 玉置勉強 幻冬舎 既刊2巻



輿水理香は、26歳独身の女性。会社を辞めてフリーのイラストライターになるが、仕事の依頼はいまいち。恋人のいない状態が何年も続いており、自宅から一駅のアパートに独り暮らしている。部屋で妄想に耽ったり、独りプールに出掛けたりと、独身女性の気ままで切ない暮らしを描いた作品。

タイトルからすると、ちょっとドキッとする作品。しかし、実際のところは、作者が「残念女子」と名付ける女性が独り暮らす日常を描いた作品だ。サッカーを見ながら、ラテン系男子との恋愛を妄想してみたり、こたつを買ってだらだらとしてみたり、気ままな生活が描かれる。

1話1話について、作者のまとめ方が上手く、切なさの中にある笑い、笑いの中にある切なさがひしひしと伝わってくる。独り近くのプールに出掛け、思いっきりリフレッシュした後、安上がりな人間である自分を褒めつつ、男が寄ってこないことをポツリと嘆く姿を描いた話など、その最たるものだ。

滑稽な話の合間には、妹の結婚、仲良しの友達との本音での語らいなど、主人公の年齢を感じさせるようなエピソードも入れられていて、26歳の女性であることを意識させられる。現実がまずいと思いつつも、現在の気楽な状態にも愛着を持つ。素敵な男性に出逢う日を夢見つつも、男性を評価するシビアな目も持つ。恋人がいたらなと思いつつも、男性に媚びることはしない。このように絶妙なバランス感覚を持ち、気取らない主人公の姿勢が、多くの読者の共感を得ているのであろう。この辺りの描き方が、とても男性の作者による作品とは思えないくらいだ。

彼女は決して、独り暮らしをしている自分に絶望したり、現在の状況を嘆いたりしない。積極的に現状を受け入れ、日々を楽しむ主人公の姿を見ると、むしろ勇気付けられるような気もする。男性から見ても、十分可愛さと愛おしさを感じられるのではないだろうか。
この彼女はフィクションです。 渡辺静 講談社 既刊1巻



葉村裕里は、10年間自らがノートに設定を書き続けてきた理想の彼女「ミチル」を思い続けてきた。しかし、同じ学校に通う先輩である久住風子に恋したことをきっかけに、ミチルの製作を中断し、現実の恋に心を捕らわれていた。ある日、これまでミチルを書き溜めてきたノートを捨てる決心をした裕里は、創作の神が眠るという神社へ行く。突如訪れた嵐の後に現れたのは、ミチルその人だった。これまで書き溜めてきた設定をすべて反映したミチルは、裕里しか目に入らない。理想の彼女と現実にいる好きな人との間に揺れる裕里。果たしてこの恋の行方は。

マガジンの新連載作品。突如主人公のことを好きで好きでたまらない女の子がやって来る。これは、比較的ありがちな設定と言えるだろう。しかし、本作の面白いところは、人を好きになるということについて様々な問いかけをしている点だ。自分にとっての理想を現実化した完全無欠の人物に出会ったら、果たして人は本当に恋するのだろうか。「好きになる人=自分の理想(に近い人)」という図式は本当に成り立つのか。自分のことしか目に入らないと言ってやまない異性は本当に魅力的なのか。

絶対に好きになるはずはないと思っていた人間が突如魅力的に映り、恋心を抱くことは十分にある。一見魅力的に思えた人が、大して魅力的に見えなくなってしまうこともある。この辺りの不可解でいて人間らしい部分をどう扱っていくかによって、本作の行方が決まるかもしれない。
リューシカ・リューシカ 安倍吉俊 スクウェア・エニックス 既刊2巻



大人になると忘れてしまう、在りし日の瑞々しい感性。それを思い出させてくれるのが本作だ。主人公の空想少女リューシカの行動や発想は、時に過去の自分に重なり、時に物事の思わぬ見方を教えてくれるものである。全編フルカラーの美しい絵で描かれる、素朴で、それでいてどこか哲学的な匂いのする世界を満喫できる作品。

約1年振りとなった単行本の発売。今回も、子どもの視点から描かれる、感性豊かな物語がたくさん詰まっていると思う。例えば、「その9 みどりのしましまのあいつ」では、リューシカにとっては普段食べ慣れているはずのスイカでさえ、切られていない状態では縞々の謎の物体に見えてしまう現象を扱っている。思えば、我々はいつから緑と黒の縞がある球と、赤くて甘い夏の風物詩が同じ「スイカ」であることを認識できるようになったのであろうか。本作は、リューシカの行動を通してこのような哲学的な問いを投げかけてくれる。

ただし、無理に哲学的な部分ばかりが強調されているわけではない。「その14 うのつくあれのはなし」は、花梨等に対しておそらく誰もが生まれてから1度は抱いたであろう感情を面白おかしく描いたものである。

その他にも、命について学ぶ話、雪だるまを作る話など、リューシカの感情をストレートに表現した話も魅力的だ。前には登場しなかったリューシカの父、隣に住む高校生の猫矢も、本作を盛り上げてくれるメンバーだ。巻末のインタビュー形式になっているあとがきも必見。


◆過去の記事◆
『リューシカ・リューシカ(1)』
ヤンキー君とメガネちゃん 吉河美希 講談社 全23巻



品川は見事殿様大学に合格し、晴れて大学生活を迎えることとなる。仲間達も無事志望大学に合格し、それぞれの進路が決まった。一方、足立花の行方はわからず仕舞いで、ついには元生徒会長不在のまま卒業式の日を迎えることとなる。花の代わりに答辞を任された品川は何を語るのか。ヤンキー君達の高校生活の集大成とその後の様子が描かれた最終巻。

予想に反して、大学編に突入せずに最終話を迎えた本作。現生徒会、パソコン部、揚羽工業高校のメンバーなど、これまで関わってきたサブキャラが総出で、以前からの読者は懐かしさを感じる最終巻であったように思う。

「メガネちゃん」こと足立花が不在のまま物語は一応の完結を迎え、彼女の秘密はとうとう明らかにされることはなかった。これは、作者が選んだ結末であると同時に、品川自身の選択でもあろう。

本編が終了した後の「LHR 1」「LHR 2」では、高校卒業から4年後の様子が描かれる。そこで明かされる、それぞれの近況が面白すぎる。最後まで楽しませてくれる内容だった。そして、最後の最後で、品川と花はまさかの再会をする… 品川先生と、足立花。この組み合わせは、そういえば1巻で品川が妄想していた内容で、1巻が伏線だったかのように思えてしまった。おそらく、それはただのこじ付けだろうが。

完結を機に、本作の全体について考察してみる。本作の魅力は、どんなところにあるのだろうか。それはひとえに、ヤンキー君が1人の女子生徒との出会いをきっかけに、学校生活に目覚め、仲間と過ごすことの尊さを知っていく過程にあろう。かつては有名進学校に在籍していた生徒は、1人でトイレに籠もって勉強する生徒であった。学校を退学になってからは、日々通う学校は退屈な空間でしかなく、級友達は皆くだらない奴にしか思えなかった。そんな生徒が徐々に学校という世界に自分の居場所を見つけ、かけがえの仲間に出会い、成長していく。その姿に勇気をもらった人は多いのではないかと思う。卒業式の答辞で高校生活を振り返った品川が思わず流した涙が、品川の3年間の変化を物語っている。そこに、少年漫画に相応しい非常にプラトニックでピュアな恋愛描写と、少年漫画の王道とも言えるようなバトル要素が組み込まれているのも、人気の秘密だったのかもしれない。

すなわち、本作は、高校生活という青春の1ページを極めて少年漫画的に描いた作品だったと考えられる。ライトノベルに描かれるような、実現不可能な高校生活ではなく、もしかした自分にも訪れるかもしれない、あるいは訪れていたかもしれない高校生活に、思いを馳せながら本作を読み続けた読者も多かったのではないだろうか。


■過去の記事■
『ヤンキー君とメガネちゃん(1)~(4)』
『ヤンキー君とメガネちゃん(5)~(8)』
『ヤンキー君とメガネちゃん(9)~(12)』
『ヤンキー君とメガネちゃん(13)~(16)』
『ヤンキー君とメガネちゃん(17)(18)』
『ヤンキー君とメガネちゃん(19)』
『ヤンキー君とメガネちゃん(20)』
『ヤンキー君とメガネちゃん(21)』
『ヤンキー君とメガネちゃん(22)』
ローゼンメイデン PEACH-PIT 集英社 既刊5巻



"まかなかった"世界に決着が着き、"まいた"世界が本格始動することになった第5巻。薔薇乙女達には束の間の休息が訪れる。一方、"まいた"世界のジュンも、自らの課題であった学校と向き合う決意をするのだった。

"まいた"世界の物語が始まるとともに、これまで出番の少なかった人物が総出演することになる。ジュンの姉ののり、級友の柏葉巴、金糸雀のマスターであるみっちゃんと、以前からの読者にとっては懐かしささえ覚える人物が物語に絡んでくる。特に、真紅と猫の対決を描いたTALE 30は、雛苺と猫のエピソードを知る者にとっては、ほろっとさせるものであっただろう。

これまでは、雪華綺晶の魔の手を逃れることを目標に、一致団結してきた薔薇乙女達だったが、当座の目標が達成された今、これまで向き合わずに済んでいたアリスゲームの意味を再び問わざるを得なくなった。ここに、彼女らが背負った残酷な運命がある。雪華綺晶が再度襲来してきた時のために、再び共闘を誓い合う薔薇乙女達だが、金糸雀が思うように、彼女らの背負った運命が変わることはない。

そして、ジュンもまた、自らの課題に直面する覚悟を決める。しかし、ジュンが外の世界へと歩みを進めることで、ジュンと薔薇乙女との心の距離は広がってしまうかもしれない。年をとることで成長し、やがては老いて死に逝く人間と、永遠に変化することなく存在し続ける人形。これまでも何度か投げかけられてきた問題に、皆はどう立ち向かっていくのだろうか。

無力化されたように思えた雪華綺晶は、密かに力を蓄え、再び戦いを挑んできそうだ。まだまだ続く薔薇乙女の戦い。一見穏やかで楽しい日々は、そう長くは続かなそうだ。


◇過去の記事◇
『ローゼンメイデン (1)(2)(3)』
『ローゼンメイデン (4)』
魔法行商人ロマ 倉薗紀彦 小学館 全5巻



魔法使いの少女ロマとその家来ミィノが、人間の欲望(クレシャ)を求めて続けてきた旅は、ついに最終章を迎える。欲望を抱えた中高生に魔法具を渡して歩いた日々の先に待っているものとは。ロマの目的が今明かされる。

5冊目にして、最終巻となった本作。ロマがこれまで人間の欲望を集めてきた理由は、今は亡き妹の命を蘇らせるためであった。第21話「イヴィダの館」から早速、あと数人分の欲望を集めれば、ロマの願いが叶うという事実が判明する。終わりが確実に迫っていることを意識させる展開で、その後の4話は緊張感を伴うものだった。

今回収録された話の筋は、どちらかというと第1巻の頃を思い出すようなもの。際限のない欲望にまみれて自分を見失い、バッドエンドを迎える者、自らの強い意志で欲望と現実の間に活路を見出す者… 本作の原点に還ったような話が多かったように思う。

そして迎える最終話が、「カルマの輪」。ここで、すべての謎が明かされる。実は、ロマの妹、リマは自身の持つ特殊な力ゆえに、ある死者の復活を望む人々に利用され、魔法が暴走する下で命を落としたのだった。その妹を復活させるため、ロマは欲望を回収していた。つまり、人間の欲望を集めてきたロマ自身もまた、欲望に捕らわれながら長い旅を続けてきたのだった。そして、その旅の目標は、これまた人々の欲望のために犠牲となった肉親の復活である。欲望が欲望を生み続けるという連鎖を食い止めることはできるのか。本作が投げかける疑問は案外深い。

これまでは背景のように無表情を貫くことの多かったロマが、終盤で大きく表情を変える。自らの欲望に捕らわれながら、徐々に狂気じみていく表情、己の欲望を叶えるためにこれまでしてきたことを振り返り、涙する表情、そして、最後に見せる笑顔… 最終話におけるロマの心情と行動自体が、これまで本作で伝えられてきたことの集大成になっていて、よく練られた終わり方だと思った。欲望は、人間が生きるために必要な糧であり、それでいて、道を踏み外すきっかけにもなり得る。人間はきっと、欲望に溺れ、もがき、時に抗いながら、生を全うするのであろう。では、欲望とはどう付き合うべきなのか。答えは本作の随所に散りばめられている。

第1巻の発売からは1年半ほど。これまで読み続けてきて良かったなと言えるような秀作であったと思う。


★過去の記事★
『魔法行商人ロマ(1)』
『魔法行商人ロマ(2)』
『魔法行商人ロマ(3)』
『魔法行商人ロマ(4)』
幻影少年 万乗大智 小学館 全6巻



人の心にダイブする能力を持った少年、秋月サトワと、その下宿先で喫茶店を営む少女、小川水音が営む探偵社には、他では解決できない悩みや秘密を抱えた依頼人が訪れる。サトワと依頼人との心の交流を描いた作品の6冊目にして最後の単行本。

5巻で前編が収録された「無償の愛」の後編と、サトワの過去を描いた「絆」の上・中・完結編が収録された最終巻。作者があとがきの部分で、描ききれなかったことがあるという心残りを述べているように、やや消化不良のまま終わってしまった感は否めない。

本作の課題は、対象の読者層をうまく絞り込めなかったことにあるのかもしれない。物語そのものとしては、人の心を扱った教訓的な要素もある内容で、少年漫画としては悪くない。しかし、物語の中には裏社会の人間も多く出てくるため、少年漫画としては若干ハードな部分があることも確かだ。私個人の意見としては、そこが本作の魅力の一部となっていると考えているのだが、一方でこのハードな部分が対象読者を絞ってしまった可能性はある。

個人の心の深奥には、その人の生き様や価値観、善意悪意のすべてが詰まっている。また、そこでは善と悪といった単純な二分法は成立しない。卑劣な犯罪者の心の中を微かに照らす善意の炎、誠実な人間の中に潜む他人を憎む心など、人間は二面性を持っている。サトワは、心の闇に切り込んでいくことで、この二面性とも真摯に向き合う。悪い行い、卑劣な行為に対しては毅然とした態度で立ち向かう一方で、人間の温かい部分に対しては優しさをもって関わる。悪い行為を憎みこそすれ、善人と悪人という二項対立を前提とはしないサトワの姿勢は、現代社会に痛烈なメッセージを投げかけているのではないかと思ってしまう。

またいつか、どこかで、ミッドワールドの世界に触れることができる日を待つ。


◆過去の記事◆
『幻影少年(1)』
『幻影少年(2)(3)』
『幻影少年(4)』
『幻影少年(5)』
ヤンキー君とメガネちゃん 吉河美希 講談社 既刊22巻



いよいよ殿様大学受験も大詰め。初詣での合格祈願、センター試験の受験、二次試験と、ステップを踏んでいく品川。仲間がセンター試験の足切りで不合格になるという出来事も乗り越え、無事殿大受験を終了した。しかし、殿様大学受験の裏では、確実に何かが進んでいた。足立花の行方がわからなくなり、一同に不安が走る。

仲良しグループの殿様大学受験物語も、ついに終盤を迎えた。想像以上に試験の様子が克明に描かれ、受験物としての緊張感を伴う展開であった。初めの予想を大きく裏切り、仲良しグループ全員が殿様大学進学という願いは叶わなかった。だが、結果的にそれぞれが改めて自分の将来と向き合うことになり、各自が自分の目指すべき大学へ向かって勉強に励むことになった。将来へ向けての思いが、今までの「みんな一緒に」ではなく「それぞれの道へ」と変化しつつも、彼らにはこれからも変わらぬ友情がある。現実の厳しさに直面しながら、自分の将来を再考する頼もしさを備えた和泉、姫路、千葉の3人の表情が爽やかだ。品川もまた、夢の中で過去の自分と邂逅し、紋白高校でかけがえのない仲間と出会ったことの意味を再認識することになる。

一方、物語はもう1人の主人公「メガネちゃん」不在のまま進むことになる。品川父の言った通りに、気付いたらどこかに行ってしまっていた花。本作の序盤でほんのわずか触れられたきりになっていた、花の生い立ちの秘密とは。

巻末のおまけには、和泉岳が自らのファッションについて語ったインタビュー記事が収録されている。おまけページの充実度は、当初から変わらずだ。


◎過去の記事◎
『ヤンキー君とメガネちゃん(1)~(4)』
『ヤンキー君とメガネちゃん(5)~(8)』
『ヤンキー君とメガネちゃん(9)~(12)』
『ヤンキー君とメガネちゃん(13)~(16)』
『ヤンキー君とメガネちゃん(17)(18)』
『ヤンキー君とメガネちゃん(19)』
『ヤンキー君とメガネちゃん(20)』
『ヤンキー君とメガネちゃん(21)』
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