しゅごキャラ! PEACH-PIT 講談社 全12巻
聖夜学園小に通う日奈森あむは、クール&スパイシーなキャラとして学園の生徒から一目置かれる存在。しかし、勝手に一人歩きしているキャラの「外キャラ」と本当の自分とのギャップに悩んでいた。ある日、本当の自分になりたいと強く願うと、守護霊ならぬ「しゅごキャラ」が生まれていた。あむは、しゅごキャラを持つ者だけが入れる学園の組織、ガーディアンに入り、仲間達と様々な経験をすることになる。2008年、第32回講談社漫画賞児童部門受賞作品。
本当に色々なものが詰まっている。なりたい自分・本当の自分探しに加え、しゅごキャラと力を合わせる変身「キャラなり」、悪の組織との戦いもある。
もちろん、少女マンガならではの恋愛要素も満載。憧れの王子様のような唯世と、謎の多いイクトの2人の男の子の間で揺れる主人公が軸。唯世から告白されてからは、主人公が次々と甘い言葉を囁かれるという展開に。途中、ガーディアンの年下の男の子からの告白があれば、困ったときには年上のガーディアンが助けてくれることもある。さながら『花より男子』を髣髴とさせるような王道胸キュン要素が揃えられている。主人公以外の登場人物にも、最後に向かうにつれて怒涛のように恋が芽生えていく。
一方、なりたい自分、自分の可能性といったテーマも、繰り返し取り上げられる。自分の可能性を信じることの大切さや、夢に向かうことの尊さが、随所で語られる。自分で自分の可能性を狭めたり、大人になって変化していくことに不安を覚えたりしながらも、自らの道を切り開こうとする主人公の姿、台詞に胸打たれる。
また、本書の所々で登場してくる大人の存在も、いい味を出している。「外キャラ」とのギャップに苦しんだり、将来が不安になったりするのは、何も子どもに限られたことではないというメッセージが、さりげなく伝えられる。カリスマ占い師の冴木のぶ子、あむの先生の二階堂悠など、案外悩んでいる大人もいるものだ。この辺りの大人の登場のさせ方が、幅広い読者層を獲得できた要因であろう。就職活動に悩む大学生にも、お薦め。
5年近くの間を、休載も少なく一気に駆け抜けてきた作品。このような形で連載を続けることができたのは『DearS』以来だ。しかも、質問コーナーなどのおまけページの充実度は、間違いなく作者の単行本の中ではトップクラス。その点でも注目に値する作品。